役員が語る、リクルートのダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンの取り組み2022年度

役員が語る、リクルートのダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンの取り組み2022年度

2021年5月に、「2030年度までに、全ての階層の女性比率を約50%にすることを目指す」と、ジェンダー平等に向けた目標を宣言したリクルートグループ。3月8日の国際女性デーを前に、リクルートグループの日本国内のDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)をリードする役員である柏村美生に、株式会社リクルートでの取り組みを聞いた。

―まず、株式会社リクルートがDEIに取り組む意義をどう捉えているのか教えてください。

柏村美生(以下柏村):DEIとは、リクルートが1960年の創業以来大切にしてきた価値観「個の尊重」そのものだと感じています。「個の尊重」とは簡単に言うと、一人ひとりの違いをありのまま受け止め、活かし合おうという考え方です。リクルートで働く人や、リクルートが向き合う社会が多様化する今、「個の尊重」とDEIを実現することの関係性は高まっています。リクルートは、価値の源泉は人であるという信念の下、多様な一人ひとりの「もっとこうだったらいいのに」という情熱に投資することで進化してきました。リクルートで働く個人や、DEIに取り組むことは社会的意義の観点や経営合理性の観点からも、自然な判断だと捉えています。

またその取り組みの過程、つまり試行錯誤している経緯も含めて、社内外に発信することが日本社会のDEI実現の一助となればという考え方から、積極的に私たちの取り組み状況を発信しようと決めてチャレンジしています。

―2022年度は具体的にどんな取り組みが実行されたのでしょうか?

柏村:DEI実現に向けて、まずは「ジェンダー平等」という目標を手段にしながら、社内の一人ひとりや、各組織がこれまで以上に「個」の能力を発揮できる状態にアップデートすることを意識しています。DEI推進室と各組織が連携しながら、より多様な働き方やリーダーを生み出すための施策を始めたところです。2022年度の取り組みのなかから、3つご紹介します。

(1)組織ごとにDEI推進の3ヶ年計画を策定し、ボトムアップでの推進を加速

数十の組織ごとに、事業長が中心となりDEI推進の3ヶ年計画を策定しました。人と組織が進化し続けるために、ジェンダー平等をはじめとするDEIの実現をどのように織り込んでいくのか。事業や組織の特性に基づく課題設定を行い、具体アクションを設計。これを機に、ジェンダーバイアス排除の仕組みづくりや、働き方改革、一人ひとりの可能性を広げるキャリアコーチングなど、新しい取り組みが次々と始まっています。

DEI推進の3ヶ年計画を策定した組織長一人ひとりが、「なぜDEIが重要なのか」「どのように取り組むのか」「自分たちのチーム、メンバーに期待すること」を、自らの言葉で社内に発信していく(画像:リクルートのイントラネットより抜粋)

(2)「管理職要件の明文化」などの取り組みによって、より多様なリーダーが生まれる兆し

画一的な働き方や、画一的なリーダー像といったアンコンシャスバイアスを排除し、一人ひとりの強みを活かした、管理職候補者の選出、育成議論を行えるよう、管理職に求められる要件を明文化し、多くの組織で導入を始めました。これらの取り組みによって、ある組織では、課長相当職で女性候補者が約1.7倍、男性候補者が約1.4倍と増え、多様なリーダーが生まれる兆しが見え始めています。

リクルート「管理職要件の明文化」導入による効果

(3)女性社員向けのキャリア支援研修を拡充

リクルートにおける課長相当職の女性比率は、2006年の約10%から2022年に約30%と大幅に増加していますが、現状は、職位が上がるにつれて女性比率が下がる傾向があります。ジェンダー平等の実現に向けて、女性社員に対しては、スキル向上と意識醸成の両面で支援しています。2022年度は、特に階層別の研修を拡充し、女性のキャリア構築をきめ細かくサポートしています。

スキル向上の面では、課長職の任用強化に向けたスキルアップ研修を開始しました。構造化など論理的な思考力を鍛えるとともに、日々の業務での実践と成長を支援できるよう、受講者一人ひとりの育成計画に接続する仕立てとしています。

意識醸成の面では、リーダーとしての活躍を期待する30歳代女性社員を対象に、強みの自覚とキャリア構築への主体性を高めてもらうことを目的に、「Career Cafe Next Step」をスタートしました。これは、2012年度に開始した28歳前後女性社員向けの「Career Cafe 28」(公募で累計1400名以上が受講)、2015年度に開始した女性社員の上司向けの「Career Cafe for BOSS」(同 累計1300名以上が受講)に続く取り組みです。

28歳前後の女性社員向けの「Career Cafe 28」、女性社員の上司向けの「Career Cafe for BOSS」、30歳代女性社員向けの「Career Cafe Next Step」の様子(Career Cafe 28、Career Cafe for BOSSは2019年以前の写真、Career Cafe Next Stepは2023年2月の写真)

―従業員からの反応はどうでしょうか?

柏村:昨年度、さまざまな場面で対話する機会があり、本当にいろいろな意見を直接聞くことができました。「DEIについて改めて“知る”ことで考えるきっかけになった」「管理職要件の対話をするプロセスで自分自身や組織のアンコンシャスバイアスに気が付いた。今後、アンコンシャスバイアスがあるということを自覚したい」「男性女性という性差で目標を立てていることに違和感を覚える。ただ、DEIの最初の大きな1歩であるということを聞いて理解できた」「自組織ではDEIが進んでいると思う。全社の状況を改めて聞いて何かできることがあるのではと感じた」など。こうした対話があちらこちらで生まれること自体、大きくポジティブな変化で、社内でDEIに対しての意識が高まっていると感じています。実際に、管理職へのアンケートでは、「ジェンダー平等を目指す意義を理解できた」と回答する人が約100%、「ジェンダー平等実現へのイメージや意欲が湧いた」と回答する人は約80%と高い水準です。

先日、社外の方に日本のDEI推進の肝をお伺いする機会がありました。「大事なことは、一人ひとりが “多様な人がいたからこそ、こんな良いことがあった”という原体験をすること」だと。

私たちリクルートには、うまくいったことをナレッジ化することで他の誰かも追体験できる強さがあります。今後も、情報提供の機会を整えていきたいですし、ぜひ皆さんにもどんどん発信いただきたいと改めて思いました。

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―2023年度に向けて。リクルートの従業員に期待することは何ですか?

柏村:職種が同じだから、年齢が近いから…と、分かっているつもりにならず、自分の当たり前が相手にとっての当たり前とは限らないという認識を持ち、コミュニケーションすることを大事にして欲しいです。自分が考えていることを忌たんなく話し、その上で「あなたも同じだよね?」を押し付けないことが大切だと考えています。そんな信頼関係をベースにして、不得意なことは周囲の人たちを頼り、得意なことでチームに貢献し、やりたいことに没頭する。それこそが多様性を活かした組織だと思うので、リクルートで働く仲間で、率先して実践していきたいと考えています。

そして、その活動の輪が、一人ひとりの社会との接点のなかから世の中に広がっていくといいなと思います。

その過程では、リクルートが社外のご意見や反応から学ばせていただく機会や、お知恵をいただく機会も増えていくと期待もしています。日本社会全体が、DEI推進に試行錯誤しながら取り組んでいる状況だからこそ、私たちリクルートのトライ&エラーを、積極的に社会に発信することで、社会とともに未来へ向けた進化をしていきたいと考えています。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

柏村美生(かしわむら・みお)
リクルートホールディングス執行役員 兼 リクルート 執行役員(担当領域:人事、広報・サステナビリティ、渉外)

大学卒業後、1998年、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。2003年『ゼクシィ』の中国進出を提案し、中国版ゼクシィ『皆喜』を創刊。帰国後、『ホットペッパービューティー』事業長、リクルートスタッフィング代表取締役社長、リクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)代表取締役社長などを経て、2021年4月より現職。大学時代は社会福祉について学び、障がい者の社会参加をサポートする仕事がしたいとソーシャルワーカーを目指してボランティアに明け暮れた。東京大学PHED(障害と高等教育に関するプラットフォーム)専門部会委員を務める

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