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「これからの介護と仕事を語ろう」〜VRで体感する、認知症の世界〜 すべての行動には理由がある。同じ人として理解を深めることが第一歩

‘17.Mar.31 Fri

文:徳 瑠里香

一人ひとりが多様な個性を活かし、より力を発揮することを目指す、リクルートのダイバーシティ推進プロジェクト「Be a DIVER!」。「多様性の海」に潜ることをコンセプトに、これまで男性の育児と仕事の両立、LGBT、働き方など多様なテーマについて、社内外のゲストによる講義と対話の場を形成することで、解決するヒントを探ってきました。

高齢者の4人に1人が認知症あるいはその予備軍だとされる現代。リクルートグループの社内アンケートでも社員の約30%が「5年以内に親族を介護する可能性がある」と答えています。

今回は、株式会社シルバーウッドの運営するサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」を訪れ、仮想現実(バーチャルリアリティ=VR)を用いて、認知症を疑似体験しました。認知症になった方はどのような世界を見て、どのような不安を抱えているのでしょうか。

参加した従業員はダイバーとなって、「介護と仕事の両立のために大切なこと」のヒントを探しに、多様性の海へと潜りました。さて、多様性の海の中でどんな気づきと出会ったのでしょうか。

※本レポートの内容はイベント開催時の2016年8月1日に基づきます。

徘徊は散歩。同じ人としての理解を深めれば、接し方は変わる

−− サービス付き高齢者向け住宅「銀木犀 ぎんもくせい」を運営する他、バーチャルリアリティ事業「VR認知症プロジェクト」を行う、株式会社シルバーウッド代表取締役の下河原忠道さんにお話を伺います。

下河原忠道(以下、下河原) 皆さん、認知症は恐ろしいものだと思うかもしれませんが、我々は認知症の方とそうでない方を差別することはありません。まずは認知症の"中核症状"をVRで疑似体験していただきます。

VR体験 〜第1話〜
深い眠りをしていたら、どこを走っているのかわからなくなっちゃった。乗り過ごしたかもしれない。電車なんて久しぶり。次はどこに止まるんだろう、ここはどこなんだろう...。だんだん不安になってきた。駅員さんにここはどこなのかを尋ねても、質問の意味を理解されずにあしらわれてしまった。私はどうすればいいんだろう...。

下河原 実際にご体験いただき、拍子抜けした方も多いと思います。そもそも認知症、特にアルツハイマー型認知症の正体は、"中核症状"と呼ばれる、脳神経細胞が衰えていくことによって発生する機能障がいです。中核症状には、記憶障がいや見当識障がい、実行機能障がい、計算障がい、判断力・理解力の障がいなど、さまざまな障がいがあります。

認知症の症状は、徘徊や暴言など行動・心理症状で語られることが多くありますが、実際はこれらの中核症状が課題となります。現場の人間にとっては、行動・心理症状で認知症が語られることには違和感があります。

認知症を語るときに、徘徊してしまう人をどう対処するかという目の前の課題解決ばかりに追われてしまう現状がありますが、我々に言わせれば徘徊は散歩です。

認知症は理解・共感されにくい症状ですが、認知症の人もそうでない人も同じ地続きの人間であるということを知っていただけたらと思っています。認知症の人としてではなく、同じ人として理解を深めることができれば、見方や接し方、世の中への眼差しが変わってくるはずです。だから、認知症が問題なのではなく、認知症の人が生きづらい社会が問題なんです。そう信じて、我々はこのプロジェクトに取り組んでいます。

認知症というレッテルを貼って、すべてを認知症のせいにするのではなく、認知症のある人たちが何に困っているのか、その気持ちに少しでも近づくことが大切なんです。

−− 続いて、VR第2話を体験していただきます。

VR体験 〜第2話〜
私は高層ビルの屋上に立っている。手すりはない。縁に立って下を見下ろすと、地面は遠く、車が何台も行きかっている。無理だ、こんなところに立っているのは怖い。でも両脇から聞こえる声は「さあ、降りましょう。大丈夫ですよ」と飛び降りるように促してくる。彼らは私に何をさせようというのか...。

下河原 認知症の中核症状に視空間失認という障がいがあります。たとえば、建物や車の影が深い穴のように見えることもあるそうです。銀木犀の床の木の筋の部分が穴に見える方もいます。今体験していただいたVRは車から降りようとするときに、影がまるで3階の建物の上に立たされているような深い穴に見えて、一歩が踏み出せないという心情を表したストーリーです。

その事実を知らないと私たちは「なんでできないの」と認知症の方を責めてしまうでしょう。でもすべての行動に理由があるんです。その方の脳の状態によって、またその時の置かれた環境によって症状は千差万別なので、その方がどういう状態にあるのかを見抜く思いやりが必要になります。怖がっているのなら無理矢理降ろそうとはせず「どうしたの?」と聞いてみる。障がいそのものに目を向けて、行動の理由を理解することが大事だと思っています。

高齢者の"施設"ではなく"住宅"だから、管理はしない

銀木犀は、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)という"住宅"です。施設は管理する場所になりがちですが、サ高住は単なる賃貸住宅なので、大家である私と入居者さんが賃貸借契約を結ぶだけです。だから管理はしません。そこに施設との大きな違いがあります。

月額費用は、家賃と共益費(水道・光熱費)に加え、生活支援サービス費(安否確認と生活相談)をいただいています。食事は365日、朝昼晩出します。全部含めて16万円くらいです。入居一時金や敷金礼金はありません。他の施設の方々には安すぎると言われるんですが、16万くらいだと厚生年金の範囲内で老後を最終的なゴールまで過ごせます。その金額でどう回すかは、経営の手腕が問われるところですね。

銀木犀の特徴としては、全館で檜の無垢のフローリングを使うなど、人が住む場所として心地よいかどうかを一番大切にして設計しています。

また、銀木犀では、ドラムコミュニケーションプログラムといってみんなで太鼓を叩いたり、外へご飯を食べに行ったり、当たり前の生活をする住環境を大事にしています。

最も大事にしているのはお看取りです。厚労省の調べによれば、8割以上の方が住み慣れた自宅で最期を迎えたいと思っているにも関わらず、現状は9割近くの方が病院で最期を迎えています。1950年くらいまでは自宅で死ぬのが当たり前でした。1976年から病院で最後を迎える方々が自宅での数を超え、今ではそれが当たり前になった。ですが、高齢者たちはこの住み慣れた場所での最期を望んでいます。我々は、この場所で自然な最期を迎えられるようなお手伝いをしています。住み慣れた第二の我が家で最期を迎えてほしいという思いで実直にやっています。

地域の人たちに認知症を理解してもらうために、オープンに

下河原 足立区にある銀木犀では、食堂の一角が駄菓子屋になっていて、子どもたちが放課後に集まってきます。店番は、認知症のおじいちゃんがやっています。要介護度3で自分の薬の管理もできなかった人でしたが、店番をやるようになったらめきめきと元気になったんです。店番をするということが、生き甲斐になって、要介護認定も改善されました。そういう役割や生き甲斐を見つけると、心も身体も動くんだということを学びました。

ちなみに、銀木犀では日中、玄関に鍵を閉めません。認知症の方も皆さん、自由に外へ出て行きます。スーパーで自分の鞄の中にパンを入れてしまい万引きとして通報があり、警察にお世話になることもありました。それでも我々はあえて制限はしません。

地域の方々に認知症を知ってもらいたいと思っているからです。そのためには、どんどん外へ出てもらって、どんどん地域の方と触れ合ってもらう。最近はスーパーで何かものを盗ってしまっても、警察に通報されたりすることはなくなりました。地域の皆さんが認知症だということを理解し、おばあちゃんたちに合わせた接し方をしてくれるようになったんです。

そうやって人々の社会的な心理環境が変わっていけば、もう少し住みやすい世の中に変わっていくと思い、このプロジェクトを進めています。

VRで認知症の症状を疑似体験し、銀木犀を見学し、下河原さんの話を聞いた従業員はダイバーとなって、"多様性の海"へと潜っていきます。「仕事と介護の両立」をテーマにさまざまな意見を交換し合いました。そして、自分自身が介護と仕事を両立するために必要なこと、介護と仕事を両立できる社会にするために自分が関わっているサービスや事業できること、この2つの視点から、それぞれが大切なことを見つけて陸へ上がりました。

「Be a DIVER!」は、一人ひとりの個性、ライフステージ、考え方が相互に刺激し合い多様性が輝く、ワクワクする場づくりを推進していきます。

ダイバーシティはみんなのもの。世界はまだ見ぬ可能性にあふれています。

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