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SPECIAL TALK SESSION

【中編】対談:伊達みきお×大久保幸夫 - 生き方・楽しみ方・働き方

ビジネススキル , マネジメント , 人材育成 , 働き方 , 地方創生
対談:伊達みきお×大久保幸夫

文:ミトミアキオ 写真:依田純子(写真は左から伊達氏、大久保)

サンドウィッチマンの伊達みきお氏とリクルートワークス研究所長・大久保幸夫による特別対談。第2回は自分の強みの探し方に迫る。

幅広い世代からの人気を集めるお笑いのプロと、日本全国を飛び回る人材開発のプロによる対談、第2回目のテーマは「自分の強みの探し方」。サンドウィッチマンの熱烈なファンでもある大久保が、その秘密に迫ります。

大久保 私はリクルートで人材関連の仕事を続けてきて、キャリアに関することを学校で教えたり本に書いたり、いろいろな企業の方たちを対象に講義することがありますが、そういった中で、まず第一に考えるべきことは、「自分の強みを磨くこと」だと言っています。伊達さんの場合、一番の仕事上の強みを、ご自身ではどういう言葉で表現されますか?

伊達 一番の強み......。

大久保 「価値」という、ほかの人にはない優れたもののことなのですが。

伊達 何だろうな、ぼくらはたぶん特殊で、やっぱり信頼できる相方がいるということが、もう最大の強みですね。1人でやっているわけじゃなく、2人でやっている仕事なので。

大久保 でもそれは相方の富澤さんが持っているスキルと、伊達さんが持っているスキルの掛け合わせだから、伊達さん自身が持ってるスキルがあるわけじゃないですか。

伊達 (マネージャーに)ぼくの持ってるスキルって何ですか?

大久保 そんな考え込まなくても(笑)。

伊達 何だろう、自分の強みってなかなか自分では分からないものなんじゃないでしょうか。

大久保 もともと富澤さんと伊達さんの役割分担としては、最初から伊達さんがツッコミだったんですか?

伊達 もともと、ぼくらはネタによってボケとツッコミを入れ替えていたんですが、たまたまテレビに出させてもらったときのネタ「ピザ屋」でぼくがツッコミで。そうしたら、やっぱりテレビ見ている人にとっては決まっていたほうがわかりやすいからということで、そこからぼくがツッコミ担当になったんです。

大久保 「エンタの神様」に出はじめてから、ずっとツッコミをやってるわけですか。

伊達 その通りです。ピザ屋のネタから。

「よく言われます、『若い毒蝮三太夫のポジション狙ってる?』って」

大久保 漫才のツッコミっていろんなやり方あると思うんですけど、どつき漫才系の叩いたりするのでもないし、相手を悪く言ったりするツッコミでもない。伊達さんのツッコミは要するに相手を痛めないタイプのツッコミなんで、相手がシロウトでもいけるツッコミなんだなっと思っていて。伊達さんはこれがすごい強みなんじゃないかなと、ぼくはファンとして見てて思ったんです。だからシロウトとの絡みはきっといけるんだろうなって、見ていて勝手に思ってるんです。最近すごくご活躍されているのは、そういう強みもありますよね。

伊達 よく言われますね。でもなかなか難しいですよ、実は。あの人と絡んだら絶対おもしろいし、どんどんテレビに映りたがっているから、カメラが回ったらいじろうと思っても、一度いじったらそこからずっと顔を隠しちゃって......。いじっちゃだめだったんだな、っていう失敗もありますよ。

大久保 微妙な境目があるんですね。いじっていい人と、だめな人と。

伊達 そうなんですよ。それは「なるほどな」と思いました。

大久保 ぼくらの世代だと、シロウト相手のツッコミっていうと毒蝮三太夫さん。

伊達 もう神様ですよ。

大久保 あの人はお年寄りに愛されてるんだけど、口ではボロクソ言うじゃないですか。

伊達 ボロクソ言いますよ、「まだ生きてたのか」とか言いますもんね。

大久保 だからそれとは全く違うタイプの、伊達さんのかたちが面白いなあと思って。

伊達 それはすごく言われます。「若い毒蝮」のポジション狙ってるの? って。狙ってないですよ(笑)。

大久保 そのポジションって、あるのかどうかもよくわからない(笑)。

伊達 おもしろいですね。やっぱり毒蝮さんだから支持されるので。もう80歳近いですもんね。

大久保 やっぱり年と関係ありますよね、芸風は。

伊達 すごくあると思います。

「自分の親父が40歳の時、なんかもう、ちゃんとしていたんですよね」

大久保 伊達さんは今、おいくつですか?

伊達 40歳です。

大久保 さっき雑誌で、宮沢りえさんが40歳になって変わったという話を読んでいたんですけど、キャリア論では40歳は変わり目。「キャリア・トランジション」といって、40歳ぐらいから自分の仕事に対するスタンスや価値観が少しずつ変わり始める、というのが一般的に言われているんです。

伊達 そうなんですか。知りませんでした。

大久保 以前、東国原英夫さんに取材したときに聞いたんですが、彼は40歳ぐらいのときにすごく変わったんですって。それまでは、たけし軍団の中で「人よりもいいクルマに乗る」ことが、芸人として成功している証だと思って結構気にして、そのもっと上を目指していくことに縛られていたんですが、40歳を過ぎたぐらいから、ふと「そんなことはどうでもいい」って思うようになった、とおっしゃってまして。それよりも自分が仕事でやったことが何につながっているのか、というようなことが気になり始めて方向転換したんだという話を聞いたんです。伊達さんの場合は何か変化がありますか?

伊達 ぼくはちょうど子供が生まれた時期ですし、自分の親父が40歳の時、ぼくはもう10歳だったんですけど、なんかもう、ちゃんとしていたんですよね、親父って。同じ年になって、もうちょっとちゃんとしないといけないなと思うことはありますね。なんかふざけてばっかり、という仕事ではあるんですけど。

大久保 親御さんの年に自分がなったということは、やっぱり気になりますか?

伊達 気になりますね。親父はすごく大人だった。

大久保 今は寿命が長いから、大人になるのにも時間をかけている。昔の人と比べると愕然としますよね、「全然違うじゃん」みたいな。

伊達 でも40歳って、なかなかズッシリくる年齢ですよね。

大久保 そうですね。

伊達 この世界に入ってテレビに出させてもらうようになったのが30歳ごろから。まだ10年しかやってないんだなと思ったんですけど、そう考えると、あと10年はしっかりやらないと。

『自分だけ気持ちよくなっちゃだめなんだよ』

大久保 実際に漫才を始めたのはもっと前ですよね。

伊達 24歳のときです。

大久保 それからもう16年ですね。その前の伊達さんの一番最初の仕事は、介護用品の販売会社で5年間だったそうですね。人生最初の仕事って年を取るまで残るっていうんですけど、伊達さんの最初の仕事って今、ご自身の中に影響として残ってますか? その時に考えたこととか、身に付けたことが今も生きてるとか、その時の価値観が今も残ってるとか、その時に学んだことがすごく大事だったとかいうことはありますか?

伊達 すごくあります。その会社の社訓が「思いやりを大切に」という言葉で、名刺にも書いてあるんですが、思いやりっていうのはこういうことなんだよというのを、社長や上司にすごく教わったんです。すごくいい言葉だなと思いますね。

大久保 そのとき伊達さんは思いやりというのをどんな意味にとらえていらしたんですか。

伊達 その前に、ぼくの高校の1年と3年を担任した先生が、「自分だけ気持ちよくなっちゃだめなんだよ」っていうことをずっと言っていたんです。高校時代はその意味がまず全く分からなくて、何言ってるんだろうなって。それが30歳ぐらいになって何となく分かるようになったんです、全てのことにまつわることなんだと。例えば簡単なことで言うと、自分がのど渇いてジュースを買いに行くなら、一緒にいる人の分もちゃんと買ってくるんだよと。要するにそういうことなんですけど、分かるようになる前は仕事していても「思いやりを大切に」というのがうまく説明できなかったですよね。

大久保 同じ言葉でも、人によって受け止め方も解釈の仕方も違う中で、伊達さんの中では先生の「自分だけ気持ちよくなっちゃだめなんだよ」というニュアンスが、「思いやりを大切に」という言葉のイメージになったと。

伊達 と、ぼくは捉えたわけです。

大久保 それ、今の仕事に通じる部分って何かありますか?

伊達 漫才とかコントをやっていても、ぼくと富澤だけが面白くなっちゃだめなんですよね。ちゃんとそれを伝えなくちゃいけないんです。だからネタに関しても同じことなんだなと思って、できるだけ分かりやすく、子どもにも大人にも分かるような言い回しに替えたりして、伝わるセリフにするようにしました。それまではこっちが面白ければいいんだって思っていたんですけど、そんなことじゃうまくいかないですね。

大久保 でも実際には両方の場合がありませんか? 自分たちが面白くなかったら、やっぱり面白くないんだと思いますよね。

伊達 もちろん。だからなかなかネタができないんですよ(笑)。ものすごい時間がかかるんです、ネタをつくるのに。

大久保 一番最初の案は、きっと自分たちがおもしろいと思わないと芸にはならない。それをわかりやすく仕上げて、両方成り立たせていくのにすごく時間がかかるんでしょうね。

「ぼくらは男を笑わせたいと思っているんです」

伊達 ぼくらは10代や20代の若い女の子、キャーキャー言うような人たちには分からなくてもいいだろう、それよりも男を笑わせたいと思っているんです。要するに自分らの世代の男を笑わせたらカッコいいよな、と。2人ともイケメンでもないし、女の子のお客さんとか来ないのは分かっているので、もうとにかく男を笑わせようと。お金払ってライブに来させようと。男ってなかなか動かないので。

大久保 難しい対象ですね。

伊達 それが今なかなかいい感じで、男女比6対4で男が多いんです。全国ツアーが最近終わったんですけど、85歳のおじいちゃんが来てましたよ。びっくりしました、親子3代で来ましたって。

大久保 親子3代、すごいですね。

伊達 いちどヤクルトホールでライブをやったとき、お客さん650人ぐらい入るのに、10代の女の子が1人しかいなかったんです。あとはみんな30代、40代、50代。その人たちを笑わせなくちゃとなると、よりおっさんみたいなフレーズになってくるんですけど、それはそれで面白いですね。

大久保 結局、伊達さんの強みは何だと思われますか?

伊達 初対面の人と会ったときに場を盛り上げたり、一番最初に入っていく切り込み隊長とか、そこは強みですね。富澤がその部分は全然ダメですから(笑)。

【キャリア的副音声】

自分の強みというのはなかなかわからないものです。伊達さんのように、私から見れば才能がキラキラと輝いて見える人でも、必ずしもそれを自覚しているわけではないようです。

P.F.ドラッカーは「強みの上に自らを築け」と言いました。弱みを直すよりも、強みを伸ばすことにエネルギーを使ったほうが生産的であり、これこそがキャリアの基本戦略だと言っています。

強みを見つける方法は、他者から褒められた言葉を思い返してみることが一番。上司や同僚は、本人以上に強みや弱みを理解しているものですから、客観的評価を参考にするということです。

ちなみに私の場合は「難しいことや複雑なことでも、わかりやすく伝えることができる」と褒めてもらったことが多いので、これを自分の強みだと理解しています。

キャリアを考えるもうひとつ重要な材料はアイデンティティということ。じぶんらしさ。価値観。そのようなものです。これは成人する頃に形成されますが、人生の正午(ユングの言葉)を超える40代以降になると、それがよりクリアになってきます。価値観がクリアになることで、本格的に個性的になっていくわけです。

(大久保幸夫)

後編に続く

対談:伊達みきお×大久保幸夫 - 生き方・楽しみ方・働き方

  1. 前編
  2. 中編
  3. 後編

プロフィール/敬称略

伊達みきお

サンドウィッチマン

1974年生まれ。宮城県仙台市出身。高校時代にラグビー部に入部し、後にコンビを結成する富澤たけし氏と出会う。高校卒業後、父の紹介で介護用品の会社に営業職として入社。4年勤務した後に会社を退職し、富澤氏と上京。「サンドウィッチマン」を結成。アルバイトをしながらライブに出続ける。日本テレビの人気お笑い番組「エンタの神様」で地上波テレビ初出演。その後、吉本興業主催の新人漫才コンテスト「M-1グランプリ」で優勝。「東北魂」と銘打った義援活動やチャリティライブの開催など、東北出身の芸人の中心となって被災地の支援を続けている。

大久保幸夫

リクルートワークス研究所所長

1983年一橋大学経済学部卒業。同年株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)入社。人材総合サービス事業部企画室長、地域活性事業部長などを経て1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年~2012年内閣府参与を兼任(菅内閣、野田内閣)。2011年専門役員就任。2012年人材サービス産業協議会理事就任。専門は、人材マネジメント、労働政策、キャリア論。

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