イノベーションを生む人材を育てる "讃える" "尊重する"の極意

イノベーションを生む人材を育てる

文:Meet Recruit編集部

いつの時代も人事やマネージャーの頭を悩ませているのが "人材育成"。人材開発・組織開発・人事制度・営業力強化における課題解決の事業を展開するリクルートマネジメントソリューションズでは、今現在の人材育成に関する実情を以下のように分析している。

「日本企業で働くホワイトカラーは、年功主義から成果主義への変換、昇進ポストの減少、雇用の不安定化など、近年さまざまな働く環境の変化に直面している。そのような変化を受けて、企業は従業員に対して、従来よりも自律的なキャリア開発を求めるようになっている」

企業の立場からすれば、従業員の活躍を望むのは当たり前のこと。しかし、上記で語られたように、自律的なキャリア開発を全ての人材が行ってくれるわけではない。それゆえに、人材育成の在り方について試行錯誤している状況だ。

企業が成長するためには、当然、イノベーションを生む人材を育てる必要がある。人材育成のためのPDCAの見直し、産学連携の有効活用、目的に合わせた研修やワークショップの実施、個人の能力を測るアセスメントツールの導入......と数多くの方法がある中で、比較的どの企業も設けているのが社内表彰制度の存在。主に実施されているのは、改善提案、永年勤続、売上げなどの優秀表彰、職務発明・考案などだが、評価を目に見える形にすることで、新たなモチベーションへと繋げていく狙いがある。

効果絶大! 魅力的な表彰制度はこれだ!

以上のことを踏まえながら、実際に実施されている興味深い企業の表彰制度をいくつ取り上げてみた。

IBM「ソーシャルを活用した社内表彰」

ここ数年で、メールの代わりにソーシャルネットワーキングに注力してきたIBMでは、独自のツールであるIBM Connectionsのボードを活用した表彰を実施している。これはFacebookのウォールと似た機能で、表彰対象社員のボードにお祝いのメッセージを送るというものだ。記載された内容はフォローしている他の社員も閲覧できるので、タイムライン上には祝福のメッセージが寄せられることも。オープンな場で表彰されることにより、対象者の認知欲求が満たされ、同時にそれを見る他の人の意欲を刺激し相乗効果を生み出しているようだ。

小林製薬「ホメホメメール」

ネーミングからしてインパクト大のこちらは、その名が示すとおりメールによって褒められるというもの。社長自ら、日頃の業務の中から賞賛に値する行動をとった従業員を指命し、具体的な評価理由がメールで送られてくる。社長直々ということがモチベーションアップにつながり、対象者だけじゃなくグループ報でも紹介されるという。このメールが送られてきた人には「ほめほめプレート」と呼ばれる盾が贈られる。

オリエンタルランド「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」

東京ディズニーリゾートでゲストにハピネスを提供するために、キャスト(=従業員)は欠かすことができない存在。常にキャストがモチベーション高くゲストの期待を超えるサービスを提供していくために、ES(従業員満足)活動に力を入れて取り組んでおり、ユニークな施策を行っている。そのひとつである「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」は、優れたホスピタリティをキャストが互いに認め、称え合うリコグニッションプログラム。キャスト間で、お互いを称え合うメッセージカードを交換し、メッセージ交換の結果をもとに、スピリット・アワード受賞者を選び、そのキャストを表彰する式典を行う。

リクルート「TOPGUN」

リクルートグループでは「TOPGUN」「ARINA」「ナレッジコンテスト」など、数多くの表彰制度を持っている。「TOPGUN」では、ビジネスの基本は顧客接点と謳っているリクルートの理念を軸とし、イノベーティブな提案や優秀な取り組みしたチームが、年に一度、従業員の前で表彰される。その表彰式の会場となるホールに1500以上の従業員が集まるが、入りきれなかった人のためにライブビューイングも行われるほど。みんなで讃えることと同時に、各事業内容やナレッジ共有が行えるという仕組みだ。

 width=

齋藤悠介/株式会社リクルートマネジメントソリューソンズ シニアコンサルタント

ここでは、讃える際の「場」と「対象」という2つの観点から論じたいと思います。「場」とは、讃える際の場のことであり"オープン"と"クローズ"に分けられます。そして「対象」とは、讃える際に重視する対象であり、主に"成果"と"プロセス"に分けられます。

まず"クローズ"の場は、上司から本人へ面談の場などを通じて行われる場合です。この場合は、"成果"のみならず"プロセス"に着目して讃えることで、取り組みに対する本人の内省が促され、さらなる自律的な行動・成長のきっかけになります。その際に有効的なのは、上司からの適切な問いかけであり、「何をしたのか」だけでなく「なぜ」「どんな想いで」といった深い部分を引き出すコーチングのアプローチです。

次に"オープン" の場とは、表彰・アワードなどの公の場を通じて行われるケース。この場合も、"成果"だけでなく"プロセス"に着目することで、組織としての望ましい行動を表出化させることになり、組織ナレッジ化に繋がります。これは、単に事例を知るというだけでなく、戦略や方針、行動規範が具体的事例を伴って再提示されるということであり、リマインド・再解釈を通じた深い理解・共感に繋がるのです。

また、関連する工夫や試行錯誤を奨励することで、恒常的に取り組む機運を作り出す効果も。なお、オープンな場を活用する際には、エントリーや選考プロセスもオープンにすることで、より効果を高めることが出来ます。

リクルートの「TOPGUN」などに代表される取り組みは、クローズな場で上司や同僚とともに取り組みを棚卸し・内省した上で、オープンな場にエントリーするという流れが出来ています。その選考プロセスも、予選から本選まで大々的に広報され、単発のお祭りではなく全体の流れの中で効果的に晴れの場が設計されているのが特長と言えます。

強い組織とは、現場での良い動きを表出化させ、それを組織ナレッジに昇華できる組織であること。そのためには、「対象」と「場」を上手く組み合わせながら"適切な讃え方"を設計することが肝要であると考えます。

組織の現状と讃えられる人を考慮する

冒頭でも述べたように、企業が成長するためにはイノベーションを生んでくれるような人材を育てなければいけない。もちろん簡単なことではないが、そのひとつの方法として、従業員に対し"讃える" "尊重する"ことを上手く活用できることが分かった。既にある社内制度を取り入れたり、個人的に実践したりと様々な方法はあるが、より効果をもたらすためには今ある組織の「場」と「対象」を十分に把握し、それぞれにマッチした方法を選択し実践する必要がある。

最新記事

この記事をシェアする

シェアする

この記事のURLとタイトルをコピーする

コピーする

(c) Recruit Co., Ltd.