【前編】対談:2人の17歳CEOが語る、ビジネスと教育と日本の未来

【前編】対談:2人の17歳CEOが語る、ビジネスと教育と日本の未来

文:鈴木貴視 写真:依田純子(写真は左から若林氏、浅部さん、三上さん)

17歳にして、アプリや学生向けサービスを展開する浅部佑さんと三上洋一郎さん。日本版『WIRED』の若林氏が聞く、10代で起業した理由。

中学生の頃に独自のサービスを開発し起業を果たした、株式会社NEXTRIYA代表の浅部佑さんと株式会社GNEX代表の三上洋一郎さん。新世代の象徴として未来を担うであろう2人は、現在17歳。ファシリテーターに『WIRED』日本版 編集長・若林恵氏を迎え、前編(全3回)では起業にいたるまでの経緯や手掛けているサービスへの想いについて語ってもらった。

若林恵(以下・若林)おふたりは今、何歳ですか?

浅部佑(以下・浅部)僕は17歳ですね。

三上洋一郎(以下・三上)そうなんですね、自分も同じです。

若林 浅部さんは株式会社NEXTRIYA、三上さんは株式会社GNEXの代表です。会社を設立したのはいつですか?

三上 創業したのは2011年の4月で、中学2年生の頃でした。設立は、2013年3月です。僕らが手掛けている『BridgeCamp』というサービスは、学生向けのクラウドファンディングとプロジェクトのサポートを合わせたアクティブな学生を支援するものです。今はTwitterやFacebookで声を掛けて集まった15〜18歳の8人が働いています。

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浅部 僕の会社は2013年3月に設立しました。三上さんの会社ほど規模は大きくないですが、主に『SoundGuess』というオリジナルのアプリを通じたサービスを提供しています。

必然的に誕生した、2人の中学生起業家

若林 起業の目的を教えてください。やりたいことの実現のため? それとも起業したいという気持ちが先にあったのでしょうか?

浅部 僕は父親の仕事の関係で小学6年生までアメリカで育ち、帰国後にLife is Tech!(中学生・高校生のためのプログラミング・ITキャンプ/スクール)が主催するワークショップに参加して、そこで初めてiPhoneのアプリを作ったんです。そのことがきっかけで、再生された音を当てるオリジナルのゲームを作りました。それが『SoundGuess』なんです。まずは、みんなに知ってもらうために『アプリ甲子園 2013』(D2Cが主催、優勝)や『Mashup Awards 9』(2013年に開催、U-18賞獲得)などのコンテストに参加して、更に継続的なサービスとして形にしていくためにも起業する必要があると感じたんです。

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三上 僕は起業したいという想いはあまりなくて、『High School Startup Summit』(一橋大学の有志団体・一橋大学起業部とサムライインキュベートが主催。2011年の8月に開催されサムライ賞獲得)がきっかけです。親戚が不動産経営をやっていたので、日本における海外留学生の受け入れ口が少ないことを知って、空室と留学生や旅行者をマッチングをしたらどうかと考えました。今でいう『Airbnb』のようなサービスです。そこでサムライインキュベートから500万円の出資を得られたのですが、ビジネスプランありきの法人化でした。

若林 2人ともコンテストへ出場していますが、その動機は何だったんでしょう? 僕が高校生の頃はバンドが流行っていて、バンドコンテストに出場するみたいな風潮があったんですが、それに近いのかなと思いました。

浅部 その感覚に近いかもしれませんね。

三上 僕自身、学校や部活動以外で何か夢中になれることを探していたのかもしれません。実際、同じ境遇の人達に声を掛けましたから。

17歳が仕掛ける未来のイノベーション

若林 それぞれが手掛けている会社やサービス、そこで掲げているミッションはありますか?

浅部 現在進行しているプロジェクトは、中高生主体の英語発信メディアプラットホーム『theforum.today』というものです。基本的には、インターネットによって人と人が繋がるようなコミュニティを作ることをミッションとしています。僕らが手掛けるサービスやコミュニティによって、生活が良い方向に豊かになればいいなと考えています。将来的には、ITをもっと良い形で社会に広めたいと思っていて、今は医療の分野を視野に入れて進めています。

若林 そういう分野を実際に手掛けている企業に就職するという進路を考えたりはしますか?

浅部 成功している人のもとで勉強することも必要だと思っていますが、将来的には自分自身でやっていきたいですね。

三上 BridgeCampでは、このシステムを通して日本を支えていく人材を輩出していくプラットフォームにしていきたいと考えています。 また、それに掛かるキャリア教育などのプログラムを全国の高校などで実施していくことでより優秀な学生を社会に供給していくことが出来れば良いと思います。 会社の最終的な目標でいえば、インターネットインフラ自体のシステムを改めて構築し直すことですね。インターネットの匿名化とセキュリティの担保が出来るインフラストラクチャが今後は大きな役割を背負っていくのではないかと考えています。

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若林 それによって、SNSなどの炎上を回避できたりするわけですよね。海外でもそういう動きはあると思いますが。

三上 僕らはサービスベースではなくて、インフラベースで考えています。例えば、今はインターネットというレイヤーの上にFacebookやTwitterというレイヤーがあって、みんなそこで戦っている。でも僕らは、インターネットという下のレイヤーに変化をもたらすことで、サービス側から集金できる仕組みができないかなと考えています。ただ、5年以上は掛かると思います。新しいものを社会が受け入れてくれることは凄く難しいですから。

若林 運用資金や収益はどうしてるのですか?

浅部 現状では明確な収益は発生していなくて、Life is Tech!からいただいた資金と2年前にコンテストで獲得した賞金を運営用や開発費にあてています。支出に関してはサーバ費用が少し掛かるだけなので、今はそれほどお金の面では困っていません。ただ、収益モデルがまだ構築されていないので、会社とはいえ会社らしくない状況。その部分に関しては、今後の課題のひとつですね。

三上 一般的なクラウドファンディングサイトの手数料が少し高めに設定されていると思うんですが、『BridgeCamp』は学生向けのサービスなのでそこは回避したかったんです。なので、手数料を3%と低めに設定しています。他のサイトのように手数料でビジネスしていくわけではなく、『BridgeCamp』に対してスポンサー企業を見つけてマネタイズしようと考えています。

プロフィール/敬称略

浅部佑
株式会社NEXTRIYA 代表取締役

1998年生まれ。2013年に『アプリ甲子園 2013』にて、iPhoneアプリ「SoundGuess」が優勝。『Mashup Awards9』でU-18 賞を受賞。2013 年11 月「株式会社NEXTRIYA」(ネクストリア)を設立。代表に就任。

三上洋一郎
株式会社GNEX 代表取締役

1998年生まれ。2011年4月、当時中学2年で学生団体GNEX を結成。サムライインキュベートからの支援により、2013年3月に法人化。中学・高校生を対象としたクラウドファウンディングサービス『BridgeCamp』を展開。

若林恵
『WIRED』日本版 編集長

1971年生まれ、ロンドン、ニューヨークで幼少期を過ごす。早稲田大学 第一文学部 フランス文学科卒業。大学卒業後、平凡社に入社。『月刊 太陽』の編集部スタッフとして、日本の伝統文化から料理、建築、デザイン、文学などカルチャー全般に関わる記事の編集に携わる。2000年にフリー編集者として独立し、以後、『Esquire日本版』『TITLE』『LIVING DESIGN』『GQ JAPAN』などの雑誌、企業や大使館などのためのフリーペーパー、企業広報誌の編集制作などを行ってきたほか、展覧会の図録や書籍の編集も数多く手がけている。また、音楽ジャーナリストとして『intoxicate』『MUSIC MAGAZINE』『CD Journal』等の雑誌で、フリージャズからK-POPまで、広範なジャンルの音楽記事を手がけており、近年では音楽レーベルのコンサルティングなども行っている。

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