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スタートアップが成功するために、考えるべきこと、変えるべきこと。株式会社じげん代表 平尾丈氏に聞く (後編)

働き方

インタビュアー:梅田杏奈(リクルートホールディングス) 文&写真:MeetRecruit編集部

2014年11月、とあるイベントが開催された。
若き事業家たちは壇上に登り、短時間で自らの事業をプレゼンする。それに対して審査員席に座る2名が、時に優しくフィードバックをし、時に鋭く事業モデルに切り込んでいく。いわゆる「ピッチコンテスト」という、そのイベントで審査員を務めたのが岡本彰彦と平尾丈氏だ。

岡本はリクルートホールディングスの新規事業開発機関、リクルートテクノロジーインスティテュートで責任者を務め、投資・事業開発などに知見が深い(岡本がインタビュアーを務めるAtomico Niklas氏との対談はこちら)。一方、平尾氏は、リクルート出身で、現在は、2013年11月に東証マザーズに上場し、創業以来増収増益を続ける株式会社じげんの代表取締役社長。大学在学中から2社を創業していたという生粋の事業家。そんな二人から生の声を聴けるとあり、一次選考を勝ち抜いた6チームに加え、イベント会場には多くの学生が集まり、大盛況となった。

※ピッチコンテスト「DRAFT!!」開催レポートはこちら

前回は ピッチコンテストの勝ち方やスタートアップにおける事業開発の難しさに関して平尾丈氏に語ってもらった。今回は事業を成功させる方法について語る。

北極を目指すより北極星を目指す!?事業における成功と失敗

梅田 たとえピッチコンテストで優勝しても、そこからスタートアップが軌道に乗り始めるまで走り続けるのは本当に大変なんですね。そもそも、成功というタイミングをどこに置くか、ということ自体も難しそうです。

平尾丈氏(以下、平尾) まだ成功していない自分が成功を語るのはおこがましいことですが、そのとおりだと思います。どこまでを成功のゴールとするかは企業の成長にとても大事なことだと思います。

梅田 平尾さんは企業の成功をどのように考えていらっしゃるんでしょうか?また、じげんの場合ですと成功のゴールはどう設定されているのでしょうか。

平尾 じげんの場合、ここ(会議室の壁を指さしながら)にある「生活機会の最大化」を理念として掲げています。リクルートの場合は「まだ、ここにない、出会い。」でしょうか。私はその世界観が実現出来た時が本当の意味での成功だと考えています。そしてそれは自分で具体的に定義できない、そう簡単にはゴールできないところに設定されています。なぜなら、具体的である時点で、達成の難易度は低くなってしまうと思いますし、成功に対する目線が高くなければそれ以上の成長は見込めないからです。よくたとえで出すのですが、私は"北極を目指すより北極星を目指すこと"に価値があると考えています。

会議室の壁にはじげん社の理念が掲示されている

梅田 確かに北極星はそう簡単にはゴールできないですね(笑)平尾さんは周りの起業家の方が失敗するケースも見ていらっしゃると思うんですけれども、失敗についてはどのようにお考えでしょうか。

平尾 そうですね。私は、失敗するケースこそ、勉強すべきことだと思います。なぜなら、成功例を勉強しても、実際にはその時々の環境など外部要因が大きく影響していて、そのとおりにしたら自分も成功できるか、というとそういうわけではないですよね。一方、失敗には必ず失敗した理由があり、そこから多くのことを学べるからです。それは過去の成功事例を軽んじているわけではなく、もちろん、伝記や歴史学、経営史として大切な知識ですし、メソッドとして自分が落とし込めるところまでやれるなら学ぶべきだと思います。

事業構造の類型を理解し、使いこなす「CREAMメソッド」

梅田 では、失敗事例からは学べることとはどのようなことでしょうか?

平尾 大体みんなつまずくポイントがあるんです。我々のようなWEBサービスでいうと、最初はたくさんの人が集まるサービスを創ろうとしがちです。何ページビューとか、何ダウンロードユーザーとか、MAU(Monthly Active Users、月に1回以上活動のあった利用者の数を示す。)とか。

梅田 確かにPV数を売りにしているようなWEBサービスはよく目にするかもしれません。どのくらい人が集まったかというのは、目標として目指しやすいように思いますが。

平尾 もちろん人が集まることは大切です。けれど勘違いしちゃいけないのは、ユーザーを集めてくることが「役務として価値が高いのか?」という点。リクルートの「ゼクシィ」といえば"式場予約"、じげんの「看護師求人EX」といえば"看護師の転職"、というように、ユーザーに対するサービス内容が明確な事業の場合には、ユーザーのサービスへの渇望度が高く、マネタイゼーションしやすいといえます。結果、集客の価値がクリアになり、マネタイズを集客とセットで考えることができます。けれど、「役務としての価値」をバンドルしていないWebサービスですと、たとえば月のインプレッションは億あるのに、月の売上高が全然出ていなかったりする。
つまり、Webサービスは往々にしてマネタイズポイント、キャッシュポイントが遠いんです。特にインターネットの起業家たちはここで失敗していることが多いです。今は各種アフィリエイトサービスや営業代理店、Google AdSenseなどのプラットフォームがあるので、昔よりは楽な面があるかもしれませんが。

梅田 マネタイズへのKPI(Key Performance Indicator、主要な業績評価の指標)をしっかり追う、ということですか?

平尾 そうですね。このアプリはこのぐらいダウンロードしていれば成功している、と思ってしまうとつまずくビジネスは多いかもしれません。自分自身も過去にPV至上主義みたいなところがありましたが、事業として成功しているのかを冷静に考えなければいけないなと軌道修正したこともあります。

梅田 今、ピッチコンテストを振り返ってみると、平尾さんは、フィードバックの際にマネタイズの部分をけっこう質問されていましたね。

平尾 そうなんです。次のステップに進んでいく際に大切なことなので、敢えて指摘するようにしていました。

梅田 なるほど。とはいえ、先ほど"みんながつまずくポイント"とおっしゃっていたように、自らつまずかないように対処するのはなかなか難しいように思います。マネタイズへのKPIを設定する際にポイントになることはありますか?

平尾 まず、類型を知るためのフレームワークを持つことは大切です。私の場合は、WEBサービスのマネタイズ手法について、それぞれの事業モデルの頭文字を取って「CREAMメソッド」と大きく5つに分類しています。 "C" は「Commission(有料課金)」、"R" は「Rights(著作権)」、"E" は「E-Commerce(電子商取引)」、"A" は「Advertisemnet(広告)」、"M" は「Marketing(マーケティングデータ)」を意味するのですが、事業モデルごとの注意点があります。

梅田 「CREAMメソッド」!たとえば、どのような注意点がありますか?

平尾 全て挙げていたらきりがないですが、たとえば広告業ですと、集めてきたPVを誰が売るのかが肝要です。Eコマースでは、フルフィル(受注・決済・発送・顧客管理など、一連の業務全般)の問題を十分に検討する必要があります。考えてみるとわかるのですが、流通・決済・システム自体の費用等の工数がかなりかかるのでスタートアップ向きとは言い難いですよね。こういったフレームワークを踏まえ、その方法論までを想定できるかどうかで差がついてくると思います。

経営は理不尽なゲームである

梅田 今回のピッチコンテストでは「未来を変える」というメッセージが強調されていましたよね。これは多分答えはないと思うんですけど、平尾さんの場合、未来を変えるアイデアみたいなものはどのように考え出しているのでしょうか。

平尾 まずは量を考えることが大切だと思うので、1日3つアイデアを出すことを習慣化しています。お笑い芸人の世界に近いかもしれません。ただ、これを10年くらいやっているからもう1万を超えていると思うと、積み重ねは大事ですね。量を考えるためにアイデアが生まれやすい瞬間は大事にするようにしています。通常業務の中で時間をとることだけでなく、よく言う「馬上、枕上、厠上」ですね(笑)そういう時にがっと考えるのもそうですし、どこにいても何をしていても、そういう視点でものを見ること。例えば、飲食店行っても、ここは客単価いくらで、何人来ていて、どういう横展開ができて、競合はどこで...とか。そういうことをもう最近は自然にやっています。だから自動的にケーススタディの数も膨大になります。

梅田 飲食店でもそんなこと考えてるんですね(笑)まずは量を、とのことでしたが、いくつかアイデアが浮かんできたら、今度はその中から「じゃあやってみよう」というものを選びますよね?そのときに一番大事にしている基準はどういうところにあるのでしょうか。

平尾 単にビジネスアイディアだけではなく、事業環境を十分に考慮する必要があると思います。マクロ要因や阻害要因など、負の力が働かないかどうかを予測するんです。その上で、将来的にプラットフォームを創れるかどうか、継続的に成長できて、なくならないマーケットを描けるかどうかを考えて判断します。

梅田 せっかくの未来を変えるかもしれないアイデアも、外部環境にその成否が大きく影響されるんですね。

平尾 そうですね。起業とか経営とか事業とかいうものはすべて理不尽なゲームです。スタート地点に立つまでの道のりも険しい上に、優秀な人材を多く雇用し、十分な資金も持っている、そんな人たちが数多く存在し、先にスタートを切っているんです。スタートアップはこういう人たちと同じ世界で生きていかないといけない。言わば、オセロでもうあと一手しかなくて、これ絶対どこ行ってもだめでしょ、というような状況です。

企業の枠を超え、より「共創」できる未来の実現のために

梅田 そのように考えるとスタートアップが成功することがとてつもなく大変なことに思えてきます。

平尾 そうなんです。そんなゲーム普通やりたくないですよね(笑)でも、だからって悲観的になる必要はないと思います。私はそのフェアじゃない中でどう生きていくのかを考えたときに、「競争するもの」「競争しないもの」「一緒に外でやるもの」という3つを決めることが大切だと思いました。"戦略"は"戦いを略す"と書きますよね。何も、誰も彼もと戦わなくてもいいんです。

梅田 戦わない場合、どういう選択肢が考えられるのでしょうか。

平尾 はい。企業活動を3つのレイヤーに分けて考え、「競争」「共創」「共層」で、「キョウソウの3レイヤー」とよく言っているのですが、2つ目の「共創」する割合を増やしていくべきだと私は考えています。
「競争」とは文字通り競い合う部分ですが、たとえばスタートアップは大企業相手に「競争」することは、極力、戦略的に減らしていくべきだと思います。そして、「共層」とはどの企業もがやっている"共通の層"のことで、どこの会社もやらなければならない業務の一部などが該当しますが、こういったノンコア業務は外部に委託するなどして、なるべく時間をかけないようにしたいと考えています。
つまり、こうして「競争」と「共層」の割合を最小限に減らした上で、他社と協調し、共に創り上げることにどんどんチャレンジしていくということです。
様々な企業がもっと自由に出逢い、企業の枠を越えて1つのことに取り組めるようになれば素晴らしいと思います。そういう明るい未来を創るために、大企業はもっとベンチャーに歩み寄り、積極的に手を組んでいったらいいと考えています。

梅田 インタビュー冒頭で、ピッチコンテスト「DRAFT!!」が、"次の事業家が育っていく未来を創るためのとても意義のあることではないか"とおっしゃっていましたが、その意義とは「共創」する意義ということだったんですね。

平尾 そうですね。リクルートとじげんも様々な場面で「共創する」関係になれたらいいなと思っていますし、ピッチコンテスト「DRAFT!!」はそういったチャレンジの1つだと考えています。じげんはこれからも「共創」していける関係を、多くの方々と積極的に構築していきたいと思っています。また、その実現に少しでも繋がるように、一人の事業家としてできる限りのことをしていきたいと考えています。

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