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SPECIAL INTERVIEW

【前編】子どもの「遊び」から、大人が学ぶこと。遊び学 × こどもみらい探求社

クリエイティブ , ソーシャル
SPECIAL INTERVIEW

文:塚田有那 写真:斉藤有美(写真は左から小竹さん、小笠原さん、松田さん)

クリエイティブの源は、子ども時代の「遊び」にあった! 多様な視点や何かに夢中になるパワーを引き出す、新たな学びの方法とは?

社会を良くするヒントは、保育士さんが持っていた

ー 今回は「子ども」と「学び」をテーマにお話を伺いたいと思います。小竹さんと小笠原さんは、おふたりとも保育士の経験から「子ども」の視点を大人の社会に活かすというビジョンをもった「こどもみらい探求社」を立ち上げていますが、ここにはどういった問題意識があったのでしょうか。

小竹めぐみ(以下・小竹) 何か大きな課題があったというよりは、もっとこうなったらいいのにな、という思いから始めました。保育士として毎日子どもと接し、彼らの視点で世界を見てみると、普段の生活では考えられないくらい楽しいことが起きるんです。彼らは何にもないところから、たくさんのものごとを生み出すクリエイティブの天才。でも、このときの多様な視点や創造性が、大人になるにつれて失われてしまうさまざまな仕掛けが社会にはある。そこに風穴を空けてもっと社会が良くなるように、子どもの持っているものを大人の社会につなげる架け橋のような事業をつくりたいと思ったんです。

小笠原舞(以下・小笠原) みんな子どもの頃は本当に豊かなものをたくさん持っているんですけど、学校に行って、会社に入るころにはすっかり忘れてしまう。子どもたちがその後の人生を生きていくとき、保育士として働いていたときの知見をもっといまの社会に接続したいと思って会社を立ち上げました。

松田恵示(以下・松田) 子どもの持っている「子ども心」を大人に伝えたいという思いには共感するのですが、それを会社にしようってなかなかできないですよね。何かきっかけがあったんでしょうか。

小竹 わたしはずっと保育士として働いてきた分、保育園の中から社会を見ると、「会社」ってものが冷たくて怖いところに見えていたんですね。一方で、この国は良くも悪くも、企業の持っている影響力が非常に大きい。そこと手をつなげたらどれだけいいだろうと思ったことがきっかけですね。

小笠原 わたしは大学で福祉の勉強をしながら、ハンディキャップのある子どもたちの施設でボランティアをしていました。大学卒業後ベンチャーの一般企業に就職してから保育士になりました。そうした中で、保育士の知見ってもっと広く活用できるんじゃないかと思ったんです。ママたちと接していても、保育士にとって当たり前のことがなかなか共有されていなくって、社会との間に大きな壁がある気がしていました。でも、子どもたちもずっと教育現場にいるわけではないですし、社会と日常は包摂的にあるものですから、保育園にいても、学校に行っても、親といても、必ず社会の影響を受けるんです。そのとき、保育士の持っている専門知識や経験をもっと大きなフィールドで社会に活かすことで、何かを変えていけるんじゃないかと思ったんですね。

松田 保育の仕事と企業の仕事をつなぐというのは面白い発想ですが、具体的にどんなことをされているんでしょうか。

小竹 こども×◯◯といった具合に、業種を超えて様々なコラボレーションをしています。 こどもがより良く育っていける社会に近づけるお仕事です。

たとえば、商品企画のアドバイザーとしてご一緒する方法。子ども向けのアプリやサービス、空間設計、おもちゃをつくりたいという企画があったときに、子どもたちの本当のニーズを考えながら、伴走するといったお仕事です。

小笠原 また一方で、子どもの遊びに学ぶ「チャイルド・クリエイティブ・ラーニング」という社内研修も行っています。これは、子どもたちが遊んでいる動画などを見て、彼らがどんなふうに遊びの中から「学び」を得ているかを知り、そこから何を学べるかを大人に考えてもらうものです。たとえば、ある素材を題材に「これ1個だけで遊びを考えてください」という課題を出し、ゲーム感覚で対決したりしています。

小竹 この研修の目標は、「自分の中の『子ども』を引き出す」というものなんです。遊び心を引き出すことが、自分の得意を引き出すことにもつながってくるんですね。

松田 保育士さんって、「社会」をつくるのがうまいですよね。みんなで遊ぶとき、混ざらない子がいたとしても「あ、そっちにワニがいるよ〜!こっちおいで!」なんて言って、うまくひとつの世界の中に引っ張り込むでしょう。「リムトーク」と研究的に言われるものですが、こうした社会のつくりかたはこちらが見ていても勉強になる。社会を変えるヒントは、こうした保育士さんの能力にあるんですね。

失敗を恐れず、創造性を育む「遊び」のチカラ

ー 松田さんは教育学や社会学をご専門とする中で「遊び学」という研究を提唱されていますが、お二人とも近いものがあるのではないでしょうか。

松田 そのとおりですね。子どもの頃はとにかく何かに夢中になる時間が誰しもあったと思うのですが、あの感覚は何だろう?と、昔から興味を持っていたんです。いま務めている東京学芸大学は学校の先生を育てる機関でもあるのですが、大学内の知識を社会に広げるために「こども未来研究所」というNPO法人を仲間と立ち上げました。そこでは「こどモード」というキーワードを掲げ、「遊びは最高の学び」というコンセプトのもとに運営しています。

小笠原 「こどもみらい」、わたしたちと同じ名前ですね!

松田 うれしい偶然ですね(笑)。ただ、「遊び」が大事だと思う一方で、最近は子どもも大人も、「遊び」をなくしているんですよ。それは失敗を嫌う人が多くなっているからだと思うんですけど...。

ー 失敗を嫌がることが、「遊び」の減少とどう関わるのでしょうか。

松田 そうですね。では、小竹さん、小笠原さん、ちょっと2人でゲームをしてみてください。左手で握手をして、右手でじゃんけんをする。勝ったほうは相手の握手している手を叩いて、負けたほうはその手をカバーしてください。

小竹 えっ、むずかしいですね...。じゃーんけん...、えっと、どっちだっけ。混乱します!(笑)

松田 ほらね、失敗したときのほうがふたりとも笑っちゃうでしょ。このように、いつ失敗してもオッケーなものが「遊び」なんです。でも、だからこそチャレンジができる。失敗するのを恐れてばかりいることと、「遊び」の経験が備わっていないことは関係しているのではないかと思います。だからこそ、これからは大人も「遊び」を学んで、自分の中の「こどモード」をどんどん引き出していけばいい。

小竹 わたしたちの目指すところもまさにそこです。例えば、子どもは落ち葉1枚でとても長い時間遊んでいたりする。それって子どもにしかできないというよりは、発達の段階でまだ機能として備わっていない部分があるからなのかもしれません。たとえば、時間の概念。大人になるにつれて、将来とか、ちょっと先にある「未来の時間」が予測できるようになるけれど、子どもにはそれがないので、他人の目を気にせずに、いくらでも打ち込めたりしますよね。

小笠原 「遊びから学ぶ」ということが幼児期の特権のようになってしまっているけれど、学校に行っても、社会に入っても、もっと「遊び」の中にこそ学びがあると知ってほしいんです。

子どもの「遊び」から、大人が学ぶこと。遊び学 × こどもみらい探求社

  1. 前編
  2. 中編
  3. 後編

プロフィール/敬称略

松田恵示

東京学芸大学 教授

専門は、社会学、教育学。社会意識論の立場から、主に「遊び」や「学び」を対象に、学校体育のあり方から玩具開発・テレビゲーム分析まで幅広く研究をおこなっている。また、中央教育審議会専門委員や不登校・中途退学対策検討委員会委員長、東京学芸大こども未来研究所理事長などの社会活動(2015年)を通じて、教育における家庭、学校、地域の連携や協働のあり方について実践的な取組にも力を入れている。現在は「遊び学」を提唱し、「遊び」を鏡とした人間や社会の理解を促進させようとしている。

小竹めぐみ

合同会社こどもみらい探求社 共同代表/NPO法人 オトナノセナカ 代表

保育士をする傍ら、家族の多様性を学ぶため世界の家々を巡る女1人旅を重ねる。特に砂漠とアマゾン川の暮らしに活動のヒントを得て、2006年より、講演会等を通して【違いこそがギフトである】と発信を始める。幼稚園・保育園などで勤務後、こどもがよりよく育つための"環境づくり"を生業にしようと決意し独立。NPO法人オトナノセナカ代表としての顔も持ちながら、全国各地で "いちど、立ち止まる"ことを対話を通して広げている。「そのまんま大きくなってね」と、こどもたちに言える社会の土壌をつくり続けている。

小笠原舞

合同会社こどもみらい探求社 共同代表/ asobi基地 代表

幼少期に、ハンデを持った友人と出会ったことから、福祉の道へ進む。大学生の頃ボランティアでこどもたちと出会い、【大人を変えられる力をこどもこそが持っている】と感じ、こどもの存在そのものに魅了される。独学にて保育士国家資格を取得し、社会人経験を経て保育現場へ。2012年すべての家族に平等な子育て支援をするために、子育て支援コミュニティ『asobi基地』を立ち上げ、2013年独立。子育ての現場と社会を結ぶ役割を果たすため、子どもに関わる課題の解決を目指して、常に新しいチャレンジを続けている。

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