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日本の伝統「風呂敷」を海外へ、ネットを駆使していかにFuroshikiを世界に広めたか

ものづくり , グローバル , グローバル人材 , デザイン , マネジメント , マーケティング , ヨーロッパ , 事業立案 , 人材活用 , 伝統 , 働き方 , 新規事業 , 起業

文:佐藤ゆき 写真提供:Link

「グローバル人材」の必要性が日本国内で叫ばれているが、グローバルに働くというのは具体的にどのような働き方、姿勢を指すのだろう。個別例を見ていくと、その在り方は実にさまざまで、パーソナルなものだ。シリーズ「海外から学ぶ日本」では、市場や職場において日本に縛られることなくグローバルな視点をもって仕事をしている人々を紹介していきたい。

5年前の2011年、日本の風呂敷を世界に広めるべくプロジェクトをスタートさせた日本人女性がいる。「Link」代表のボウスキル京子さんだ。彼女が立ち上げたLinkのチームは、それまでの風呂敷とはがらりとイメージを変えたモダンなテキスタイル「Furoshiki」をつくり、リアルな店舗は持たず、ネットを駆使して世界中のファンを獲得していった。

「Furoshiki」とネットで検索しても情報が少なかった当時、彼女とデザイナーたちは「Furoshiki」を世界に広めるために何をしたのか。

3年間のロンドン滞在を経て京子さんが日本に帰国されるタイミングで、Linkの創業ストーリーについてベルリンでお話を伺う機会を得られた。

目標は、ネットで「Furoshiki」と検索したときにナンバーワンになる

― さっそくですが、Linkが始まった経緯を教えてください。

今から約5年前、ちょうど二人目の子供を産んだあとの頃でした。その頃、イギリス人で東京に7年住んでいた友人のルシンダとよく「何かやりたいね」と言っていました。私は当時、外資系小売業の企業に勤めていて、ルシンダは主婦でした。彼女と二人で「インターネットを使ってリアルな商品を販売したい」というようなことを話していました。

具体的に考えてみた結果、まず「手ぬぐいはどうだろう?」ということになり、二人で手ぬぐいのワークショップにも行ってみました。東京の下町でワークショップがあったのですが、真剣に手ぬぐいづくりを勉強したいという動機で来ている人も結構いて、面白くて。それで、手ぬぐいを作ろうかという話になったんですけど、手ぬぐいだとせいぜい1枚1000円が限度で高く売れないから、じゃあ風呂敷の方がいいんじゃないかと。そんな感じで、風呂敷をつくるというアイデアが生まれました。

― お二人とも、テキスタイルづくりやデザインなどの経験が既にあったんですか?

彼女は、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業していて、グラフィックアートを専攻していました。私は東京造形大学という日本の美大で勉強していました。お互いそういうバックグラウンドはあります。

風呂敷は、日本的なベタな柄が多いですが、私たちは日本的な感覚を残しつつ、もっとモダンに誰もやったことのないアプローチで実践していきたいという事を話していました。

グーグルで「Furoshiki」とローマ字で検索してみたら、富士山の絵とかベタなものしか出てこないし、Furoshikiというローマ字は全然ネット上で広がっていないし、情報がとても少なかったのです。だから、逆にFuroshikiというワードでネット上で一番目立ちたいと思いました。

それが第一。Furoshikiで検索したときにナンバーワンになるような商品を作る。当時はPinterestもあったかなかった、のような感じでした。Instagramもまだ出たての頃でしたし。インターネットで日本の伝統的商品を売る事が、まだ新鮮な感じで今とはかなり違いました。

だから、誰も見たことのないようなオシャレな風呂敷を作って、それをインターネットだけで売ろうと思ったんです。

Furoshikiをアートにする

― ネットだけで、というのが面白いですね。

その友人のルシンダはその後アメリカに引っ越してしまったんですけど、ネットさえあればメールでデザインのデータのやりともできるし。その頃はモノを作るといったら、机に座って、お互いに見合ってというところからスタートするのがメインだった気がするんですけどね。一度も顔を合わせずに商品を作って、それをネットだけで売る、ということにこだわりました。

デザインができたら、風呂敷屋さんに「このデザインでできますか?」って、メールでデータを送って確認してもらって、それを風呂敷屋さんが型にするんです。その型を元に、職人さんが一枚ずつ手で刷っていきます。日本の風呂敷づくりのクオリティは世界一ですよ。

Linkの創業者、ボウスキル京子さん。風呂敷づくりの現場にて。

Linkの創業者、ボウスキル京子さん。風呂敷づくりの現場にて。

― Linkの風呂敷を見ると、これまでの伝統的な柄とは違ってすごくモダンですよね。

風呂敷を風呂敷として使うのではなく、壁にかけて一つのアートになるぐらいのものにしたかった、という思いが当初からありました。デザイナーのルシンダも、ロンドンでアートを学んだあとに日本に7年住んでいますから、どういうものが日本の外でウケるのかという点については、外からの視点で考えることができます。

真四角で、900mm×900mmの限られた枠の中で表現するという点は、デザイナー的にもチャレンジで、大きな一枚の絵を描くという感じでもあるんです。

それで、ルシンダとロンドンに住んでいるイラストレーターの方にもデザインをお願いして、最初の1年半は二つのデザインだけで運営しました。こうしたコンセプトでつくったものを、どうやったら人に知ってもらえるのか。Furoshikiという言葉なんてそれまで聞いたことのない、何も知らない人に対して、どうやったらFuroshikiを伝えられるのか。当初はモノを実際に売るというよりも、まず実験をしてみたかったのです。

世界中のミドルクラスの興味は共通している

― ネットだけで、どのように風呂敷を広めていったのでしょうか?

何をやったのかというと、まずはとにかくネットで露出するために、アメリカでオシャレな話題を扱っているブロガーで有名な方々にアプローチしていきました。ちょうどそのときブロガーというのも流行り始めていて。そしたらそれなりに有名なブログが取り上げてくれました。今では超有名ブログに成長したブログも、当時LinkのFuroshikiのことをちょっとしたトピックで載せてもらったりもして。

それから、Etsyというアメリカのハンドメイドeコマースサイトにもいち早く載せました。この効果はとても大きかったです。デザイン的にインパクトがあったみたいでどんどん広がっていきました。それがきっかけで、Pinterestなどでもどんどん広がりました。当時は、そんな感じで実験的にやっていました。

― 反響がすぐに得られたのは、すごいですね。

EtsyもPinterestもまだ初期の頃で、時期がとても良かったんだと思います。インターネットに興味があり、真っ先に新しいことをやるのが好きだったので。

それで、1年半の実験を経てGoogleで検索すると上の方に出てくるようになったんです。有名ブログにも載せてもらいましたし、そのおかげで。

それから、英語でも風呂敷についてリーフレットをつくって製品に添付したり、英語のホームページも作ったりしました。

― 外国人だと、どういう人が興味を持ってもらえる場合が多いんですか?

日本が好きだからというよりも、グラフィックが好きだという理由で興味を持ってもらえる場合が多かったです。あとから「ところでFuroshikiってなに?」って聞かれるケースも結構ありました。

あと、最初はスカーフとして身に着けたいというコメントが多かったです。LinkのFuroshikiは、主にスカーフとして身につけられるような、ハンカチほどの薄い素材を使っています。一部でシャンタンという厚い素材の物も扱っているんですけど。

英国人デザイナーのルシンダ•ニュートンダンがデザインした作品「Folded Paper Furoshiki」

英国人デザイナーのルシンダ•ニュートンダンがデザインした作品「Folded Paper Furoshiki」

― スカーフとして身につけたい方が多いというのは意外です。物を包むためではないんですね。

スカーフのような形でファッションで身につけられるものにしないと理解してもらえないと、ルシンダがよく言っていました。色々な巻き方や包み方ができるものとして見せても、ハードルが高くなってしまうので、やっぱりファッションにしないとだめだったんです。私も10年リテールの業界にいたので、そういうマスの心理もなんとなく分かりました。

― 海外の購入者の感覚をしっかり捉えていたんですね。

ですが、今はまたオーセンティックジャパニーズのトレンドが来ていると思います。私が住んでいたロンドンも、日本の商品だけを取り扱っている雑貨屋さんもあります。

ちょっと前まで、日本の製品のプロモーションって少しださかったんですけど、それも変化していると感じます。以前はいい日本のものがあっても、英語のサイトもなかったりして、外に伝わっていないということもありました。

― ロンドンで日本ブームですか?

なんとなく、欧州でも欧州のものに飽きている人って増えていると思うんです。シンプルになりたい欲求なのか、アジアへの興味が増しているとも感じます。それが日本への興味にもつながっているのかもしれません。

ロンドンでLinkの展示会を開催すると、来てくださるのはイギリスや近辺ヨーロッパのミドルクラスの方が中心で、だいたい一定の社会の層の方になります。

世界のミドルクラスの人々の興味って、今の時代はすごく似ていると思うのですが、そういう世界中のミドルクラスの人々に一度にリーチできるのはインターネットの魅力ですよね。世界には何百カ国とあるので、一国の購入者の数が限られていても合わせれば大きな数になったりします。

粘り勝ちで、職人の協力を得る

― 世界のトレンドに対する感覚を持てるのはすごいですよね。京子さんは最近までロンドンに3年ほど暮らしていらっしゃったとのことですが、それ以前にも海外で生活された経験があるのでしょうか?

ロンドンで暮らす前は海外に住んだことはないけれど、多分これまでの職歴からそういう感覚が持てたのだと思います。外資の小売業で働いていましたから、インドで商品をつくって、パーツは中国でつくって、ロンドンで広告媒体をつくって、それを使って日本で売りましょうというような流れでものがつくられていて。

それが普通なんです。今はよくグローバルって言われるけど、昔からリテールってそういうグローバルなプロセスでものをつくって売ってますから。グローバルに外に出ようって声も増えてますけど、なぜ今さらと、ちょっとピンとこなかったりもするんですよね。

ですが、確かに日本国内の風呂敷屋さんだと、国内のデパートなどの卸先が決まっていて、国内営業でずっとやってきてますから、海外で売るというのはハードルが高かったと思いますよ。でも今は、これでは長くやっていけない、海外で売らなければという思いが高まっています。

Linkの風呂敷は、日本の職人が一枚一枚手で刷っていく。

Linkの風呂敷は、日本の職人が一枚一枚手で刷っていく。

― Linkの場合は、日本の風呂敷職人の方々とのコラボレーションはスムーズでしたか?

画像を撮影するために取材をしようとしても二度目から断られてしまったり、かなり苦労をしました。「恥ずかしい。こんなもの見せるものじゃない」とか言われることもあって(笑) 。

Linkからの受注量ってデパートなどに比べればきっと少ないし、「海外向けに売ってる? 英語も分からないし」とピンとこない感じなのかもしれません。

それで、4、5年経ってもなかなか職人さんが協力的になってくれなくて、考えたんです。 Etsyって購入者のレビューが書かれるじゃないですか。そうしたレビューを、ファックスで職人さんの工場に回してもらうように担当者に頼んだんです。お客さんの生の声を聞いてもらえれば、信用してもらえるかなと思って。英語のレビューは翻訳しました。

一度そんなレビューを送ったら、「職人さんたち、ちょっと嬉しかったみたいでご機嫌でした」と担当者に言われ、それからどんどん送るようにしたら効果てきめんでした。外国の購入者からの感動のメッセージが嬉しかったようです。恥ずかしいから絶対来るなって言っていた職人さんでしたが、その後は「取材いつでもOKですよ」と言ってもらえるようになったりもしました。

そうなるまでには、半年ぐらいかかりましたけどね。今では、電話すると「いつでもどうぞ」と言ってもらえたりもして。Linkの仕事が入ると嬉しい、というようなことも言われるようになりました。きっと購入者との距離が遠いマスの仕事とは違うのが、良かったのだと思います。

―  6年ほどで世界中に顧客を獲得していったLinkですが、今後の展望などはありますか?

つい最近まで3年ほどロンドンに住んでいたのですが、短い期間ですがロンドンというマルチカルチャルな場所に住む機会が持てた事で、リアルな海外のマーケットを知る事ができたのは何よりの収穫でした。

でもそれと同時に日本という国を外側から見る目もできて、帰国して間もない今、日本の良さをおそらく人一倍感じているかもしれません。今まで育ってきて普通だったはずのすべての事が新鮮で。

これからはしばらく日本をベースにして、職人さんを表に出し日本の伝統技術の素晴らしさをもっと世界に伝え、世界の人々に共感してもらい、素直に「いいよね」と思える世界観なり商品を作っていければと思っています。今までと同様、決してマスマーケットの世界にはのらずにコツコツと自分達のできる範囲の中で。

日本の布といえばLinkだよね、と言ってもらえる事が次の目標かもしれません!

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