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SPECIAL INTERVIEW

【後編】子どもの「遊び」から、大人が学ぶこと。遊び学 × こどもみらい探求社

クリエイティブ , ソーシャル
SPECIAL INTERVIEW

文:塚田有那 写真:斉藤有美(写真は左から松田さん、小竹さん、小笠原さん)

新たな発想や仕事のスタイルは、ときに既存の評価軸とは交わらないもの。自分の信じる価値を社会につなぐ、「遊びのプロ」を目指して。

中編では、「遊び」と「学び」の境界から、個性を育むための環境作りについて語っていただいたが、続く後編では新たな「価値」を社会に見出す方法について伺う。

新たな「価値」を社会に見出す方法は、子どもたちから学べる

ー 企業においても学校教育においても、指針となる評価基準が変わらない限り、新たな取り組みを実践するまでに時間がかかるように思います。既存の「評価」とはどう折り合いをつけるのが良いと思いますか。

松田恵示(以下・松田) 評価軸はひとつじゃなくて、いくつかあればいいと思うんですよ。たとえば会社の中にしても、仕事における評価はもちろん、お母さんやお父さんとしての評価、地域のおっちゃんとしての評価とか、色々あるはず。そこに思い込みで優先順位をつけてしまってはよくないですね。いま評価の多様性についてはよく議論されていますが、その仕組みをどうすれば社会に実装できるかはこれからの課題ですね。

松田恵示

小竹めぐみ(以下・小竹) 「アリの目、鳥の目、魚の目」という言葉がありますが、まさに評価の基準は多様であった方がいい。自分自身として、またチームや企業全体の中で、どういう立ち位置でいたいのかといったそれぞれの視点が必要だと思うんです。

小笠原舞(以下・小笠原) 子どもたちを見ていると、子どもってお互いの良さを見つけるスペシャリストだと思うことがあって。ある子どもが無言で積み木をやっていると、自然と周りの子たちがマネをして集まってきたり、歌が好きな子に引っ張られて一緒に歌ってみたり。それは「評価」というより、いいところを見つけ合って関係性を築いていると思うんですね。自分たちの外側に評価軸があるから、いつの間にかそれに囚われてしまうのですが、本来の評価はひとつではないことをわたしたちは知っているはずなんです。こどもたちが目の前で見せて、教えてくれました。

小竹 自分たちが何を価値とみなすかを考えたとき、主語をどこに置いてるかが重要だなと思うんです。親御さんたちとお話ししていると気付くのですが、こういう仕事をしているとしょっちゅう「どこかいい保育園を教えてください」という質問を受けるんです。そのときは決まって、「あなたにとっていい保育園ってなんですか?」と聞くようにしているんです。そうすると返ってくる答えはマチマチで、いつの間にか自分たちの「良さ」の基準を、社会やここにないものに任せてしまっているんですね。それは親御さんが悪いというわけではなく、そう感じさせてしまう社会環境の中に置かれてきた歴史があるから。そうではなく、目の前にいる子どもの状態や自分の気持ちを指標にしていったら、何が良いかは自ずと見出せてくると思うんです。

小笠原 「いい子にするにはどうすればいいですか?」という質問もよく受けますね。でも「いい子」の定義なんてありませんよね。日本語って感覚的に通じてしまうことがあるので、「良さ」の差異があまり話されないままに会話が進んでしまう。でもそこで一歩踏み込んで、何が自分や子どもにとって良いのかを考えて、次につながるコミュニケーションが生まれてくるといいですよね。

小笠原舞

松田 仕事と遊びにも、本当は境目がないんです。「遊び」は本当に創造的な行為だから、「仕事が遊び」になったら最高ですよね。社会の中に「遊び」をたくさんつくって、その状態をもっとポジティブにとらえていいと思うんですよね。

子どものタフな世界を取り入れ、「遊びのプロ」を目指す

ー これまでとは違った角度の「評価」や「良さ」は、短い時間軸ではわかりにくい部分もありますよね。それは、会社の業績を数年先に見るのか、十数年先までを見越しているかという違いにも関係するとも思います。

松田 「わからない」という感覚はとても大事だと思うんです。わからないものに出会ったときに不安を感じるか、面白いと感じられるかどうか。遊びの精神をもっていれば、きっと面白いと感じられるはずなんです。遊びを体験するということは、未知なるものに出会ったときも柔軟に対応できる基礎体力をつくっているとも言えますね。もちろん、未知のものにはリスクもともなうのですが、リスクが完全にゼロの社会なんてありえません。そこに神経質になるか、ちょっとくらいいい加減に向き合えるかどうかが生きる力になっていくのかもしれません。

小竹 わたしたちの会社も、その時々の出会いやできごとを楽しみながらいまのベストを探り続けています。言い換えれば、常に変化している状態。でも、ベストなやり方を積み重ねていけば、結果として残ったものが会社としての信頼につながっていったりもする。どうなるかわからない未来を楽しんでいるなと思います。

松田 一方で、遊びはいつか終わるもの。遊びが終わった先には社会に接続する仕事の世界があって、何らかのかたちは残さなければならない。でも、今度は仕事ばかりになると創造性が失われてしまうので、また遊びマインドに戻してみる。そうしていつでも自分を相対化しながら、「遊びのプロ」を目指していけるといいと思うんですね。

小笠原 大人になって良かったと思う瞬間は、遊んでいる時間もあれば、仕事の時間も選べる。そして、仕事をして社会につながるというフェーズの中で色々な人と出会い、自分だけでは得られなかった世界が広がって、新たな楽しさを発見できたりもする。その両方を行き来できるのが面白いんですね。

松田恵示・小竹めぐみ

小竹 「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がありますが、わたしにとっては「ワーク・イン・ライフ」。やりたいことを続けていたらそれが仕事になって、いつしか生活になっている。それがなんでかなと考えると、自分が大事にしているものを外に発信していったら、他人にもその価値が伝搬して、うちの会社でもやってくれと言われるようになり、いつしかそれが仕事になっていったんです。自分が何に心が動かされるかを一番に突き詰めていくと、もちろん面倒な仕事だってたくさんありますけど、モチベーションがずっと続いていくんですね。

小笠原 自分のやりたいことをうまくデザインして、他の人に伝える方法をもったときに「仕事」が生まれるのかもしれません。お金をいただくものに対しては、自分の思いをちゃんと社会に適応するかたちにデザインしていく、ということが仕事の意味なのかなと思いますね。楽しくないと続かないし、好きなことを続けていいんだ、という大人の背中を子どもたちにも見せていきたいですね。

松田 これはよく言われることですし実体験もあることなんですが、子どもってサンタクロースを本気で信じている一方で、それがお父さんやお母さんであることもどこかで気付いているんですよ。子どもにとってはどちらも真実なんです。大人からすると考えられないけど、そういう世界を引き受けられるのは子どものタフな能力であり、大人にとってもこうした矛盾する世界を同時に受け入れる覚悟が必要なんじゃないかな、と思っています。

子どもの「遊び」から、大人が学ぶこと。遊び学 × こどもみらい探求社

  1. 前編
  2. 中編
  3. 後編

プロフィール/敬称略

松田恵示

東京学芸大学 教授

専門は、社会学、教育学。社会意識論の立場から、主に「遊び」や「学び」を対象に、学校体育のあり方から玩具開発・テレビゲーム分析まで幅広く研究をおこなっている。また、中央教育審議会専門委員や不登校・中途退学対策検討委員会委員長、東京学芸大こども未来研究所理事長などの社会活動(2015年)を通じて、教育における家庭、学校、地域の連携や協働のあり方について実践的な取組にも力を入れている。現在は「遊び学」を提唱し、「遊び」を鏡とした人間や社会の理解を促進させようとしている。

小竹めぐみ

合同会社こどもみらい探求社 共同代表/NPO法人 オトナノセナカ 代表

保育士をする傍ら、家族の多様性を学ぶため世界の家々を巡る女1人旅を重ねる。特に砂漠とアマゾン川の暮らしに活動のヒントを得て、2006年より、講演会等を通して【違いこそがギフトである】と発信を始める。幼稚園・保育園などで勤務後、こどもがよりよく育つための"環境づくり"を生業にしようと決意し独立。NPO法人オトナノセナカ代表としての顔も持ちながら、全国各地で "いちど、立ち止まる"ことを対話を通して広げている。「そのまんま大きくなってね」と、こどもたちに言える社会の土壌をつくり続けている。

小笠原舞

合同会社こどもみらい探求社 共同代表/ asobi基地 代表

幼少期に、ハンデを持った友人と出会ったことから、福祉の道へ進む。大学生の頃ボランティアでこどもたちと出会い、【大人を変えられる力をこどもこそが持っている】と感じ、こどもの存在そのものに魅了される。独学にて保育士国家資格を取得し、社会人経験を経て保育現場へ。2012年すべての家族に平等な子育て支援をするために、子育て支援コミュニティ『asobi基地』を立ち上げ、2013年独立。子育ての現場と社会を結ぶ役割を果たすため、子どもに関わる課題の解決を目指して、常に新しいチャレンジを続けている。

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