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リクルート・サイバーエージェント・ファインドスター。各々が描く「経営人材育成」と「制度」のカタチ

Recruit , マネジメント

文・写真:MeetRecruit編集部(写真は左から水谷氏・今村)

経済産業省のデータでは、日本には大小含め421万の企業があるという。もちろん、一人の経営者が複数の会社を経営している場合もあるだろうが、それを含めても400万人近い経営者が世の中に存在している。
企業の永続性を考えると、その400万人の経営者は自らの企業を任せられる後進を育てていかなければいけない。

今回は、新卒を社長に抜擢するなど、大胆な人事施策・人材育成に定評があると言われるサイバーエージェント、そして「日本で一番起業家を輩出したい」という想いのもと、ユニークなグループ経営をおこなうファインドスターグループ、そして「起業家精神」を会社のユニークネスの一つに掲げ、個々人の自主性を引き出す多様な制度を持つリクルートの3社が集まり、経営人材の育成について語り合った。

ファシリテーションは、組織コンサルティングや管理職育成を手掛ける株式会社JAMの水谷 健彦氏でお送りする。

話者:
株式会社リクルートホールディングス 人事統括室室長 今村健一
株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長 曽山 哲人 氏
株式会社ファインドスターグループ 代表取締役 内藤 真一郎 氏

※本文中の肩書きに関しては、2015年12月時点のものです。

水谷 今日は経営人材育成ということで皆様のお時間を頂きました。堅苦しいパネルディスカッションというよりは、やいのやいのとお話出来ればと思いますのでよろしくお願いします。

リクルートの場合

水谷 リクルートさんは2012年にホールディングス化されて、そこから子会社の社長や経営者を育成しないと、という風になったんですか?

今村 まずそもそも分社の目的としては、それぞれの会社がマーケットに向き合って経営のスピードを上げる、という事を掲げていました。その点に関しては成功していると言っていいと思います。事業会社は国内で7つありまして、当たり前ですが分社したその日から社長が7人生まれたわけで、その中で制度や、各社の執行役員の任命といった形で裁量をもってやっています。そういった自律性に関しては良かった、というのが現段階での振り返りですね。

水谷 人材のマネージメントに関してお伺いしたいのですが、いわゆる欧米式のプール型(各人材をプールしていき、いい人材を上のレイヤに上げていくようなやり方)の人材開発をおこなっているイメージなんですかね?

今村 そうですね。今はその形でやっています。人材をプールして、というやり方を始めたのは7年前くらいからでしょうか。当時の経営陣がGEさんなどグローバル企業の人事施策を参考にしながら始めました。

内藤 分社のデメリットはありました?

今村 正直あまり感じないですね。元々リクルート自体が1社の会社として"富士山"を目指すような、一点でTOPを目指すのではなく、色々な山を作っていこう、という"八ヶ岳経営"という考え方だったので、そういった意味で分社化は理に適っていた面があるのだと思います。

人事の立場で言うと、各社で採用を始めたので各社に存在するタレントが見えにくくなった、みたいな部分はありますが、そこはどう情報を吸い上げていくか、といったような制度でどうにか出来る範疇だと考えています。

水谷 新卒採用という面では何か影響はありましたか?

今村 例えばSUUMOを展開するリクルート住まいカンパニーだと住まい領域に興味のある学生を採用出来る、など、会社が分かれたことによるメリットはありました。現在エンジニアをはじめとしたIT人材の新卒採用はホールディングスでやっていますが、ビジネスサイドは各社でやるなどして、役割を整理しています。

対談風景

リクルートのIT人材育成

水谷 先ほどプール型の人材マネージメントをしている、と聞きましたが、IT人材のプール・配置なんかもおこなっているんですか?

今村 今全社員で3万人ほどなのですが、そのうち1,200人くらいをIT人材と位置付けています。元々は各社で中途採用をおこない配置していたので、ホールディングスから見えていなかった人材もいたのですが、現在は全IT人材が年1回スキルアセスメントをおこなっていて、徐々に人材の見える化は進んでいます。

スキルアセスメントといっても一般的なアセスメントではなく、細かく言うとIT関連の職種を、例えばデータサイエンティスト・アプリエンジニア・開発マネージャー、のように7職種に分けて、その職種ごとにスキルチェックシートを作っています。2年前くらいからの取り組みですね。

水谷 スキルチェックなどもなかなか難しいですよね。

今村 営業とか商品企画、財務・経理などのスタッフ機能は旧来の人間で、ある程度判断出来ます。ただ、IT人材はなかなか難しい。なので、IT人材の評価はIT人材であるエグゼクティブに任せる仕組みにしています。

例えばある事業会社がWebマーケティング担当の執行役員を新規任用したい場合は、他の事業会社のWebマーケティング担当執行役員が横断的に評価をおこなうようにしています。同じ職種、同じスキルセットで生きているので、評価する側もされる側も納得できる現時点で最適なやり方でだと考えています。

そうなる前は例えばソフトウェアエンジニアだと「全くコードを書けない人が判断」みたいなところで不満感があったりもして、そこに比べると全然不満感は無いですね。

水谷 IT人材の評価はすべてスキルベースなんですか?例えばヒューマンスキル的な面は見るものですか。

今村 色々な人の課題感でレイヤごとに少しずつ異なりますが、イメージ8:2の割合でスキルを重視している感じですね。

内藤 この前Googleに行ったんですが、Googleでは上司・同僚とインタビューで評価・判断している、とのことだったんですよね。最終的にはその形が一番いいと思います?

今村 僕たちもIT人材の評価という観点ではGoogleはベンチマークとしてます 。彼らは同僚評価がそのまま自分の評価になるんですが、それはそもそも優秀な同僚しか周りにいないから出来る面もある(笑) 早くそこまでいきたいな、というのが本音のところですね。

水谷 リクルートさんにそこまでいってない、と言われてしまうと日本の会社の中でどこがいけているのか困ってしまう部分もありますが...(笑)

今村 リクルートがIT人材の本格採用・育成に取り組み始めたのは3~4年前なんです。その時点では完全に出遅れていましたね。サイバーエージェントさんはもちろん、Yahoo!さんDeNAさん楽天さんなど、非常に採用・育成が進んでました。当時、学生と話をしても「リクルートってエンジニア採用してるんですね」というレベルだったんです。そこから比べるとやっと進んできたイメージです。

リクルートの人材開発とは?

水谷 経営人材の話に戻しますが...いわゆる「総合職」のTOP人材の開発はどのような形でおこなわれているんですか?先ほどの例でプールすると考えると、プールに入れたり、外れたり、というのはどこで発生するのでしょう?

今村 グループ全体として「人材開発委員会」という仕組みで、プレイヤー・マネージャー・役員など各レイヤでの育成・キャリア開発をおこなっています。これがTOPまで浸透していて最高レベルはホールディングスの執行役員候補が対象です。

例えば執行役員候補に対してどういう議論がなされているか、でいうと、年に一度、2~3年以内に執行役員になる可能性がありそうな人の事を2日間かけて話をします。各社社長や執行役員がその対象者の事を、簡単に言えばプレゼンするんですね。まずは先にその人を評価し、16の項目に細分化して点数をつけます。その中でこの人の強みはこの点、課題はこの点、と。それに対してプレゼンター以外からそれは良い、それは普通のことなのでは、などの突っ込みを入れて場が進行していきます。その強みを活かすために海外での経験を積ませよう、その弱みをカバーするためにスタッフ職を経験させよう、などの具体的なスキル開発の議論が同時におこなわれます。

いわゆるプールから外れるというようなこともありますが、別にそれでずっと外れるわけではなく、開発課題が克服され、一定の成果を残したことを前提に再度プールインが提案されたりします。

水谷 その16項目というのは具体的にどういう内容なんですか?

今村 まず大きく、"Values"と"Skills"に分かれています。Valuesは価値化や考え方、Skillsはビジネススキルを指しています。

例えばValuesの一番上位テーマには「志す」と掲げてまして、その中で "中長期の社会課題を解決していく志し" "私心の無い姿勢"という風に個別に分かれています。

Skillsの方は"勝ち筋の解明"や"徹底思考"など、「~~しきる」「~~しぬく」というしつこさが定義されていますね。

水谷 価値観のほうでいうと、ビジネスマンとして、というよりは「人間として」といったような粒の内容が入っている、ということですね。

今村 そうですね。社内では「価値観や考え方」として定義していたのですが、外部の方とお話すると「それってポテンシャルって事ですよね」と指摘されたことがあります。人間が子供のころから持っている「好奇心」や「洞察の力」「人を巻き込む共鳴性」みたいな所の資質を見抜く項目がValuesかもしれません。

水谷 点数などは本人に開示されているわけですよね?

今村 開示されてます。点数などもそうですが、フリーコメントとして改善点なども同時に伝えられるんですよね。例えば部下から「今村さんがこの前言っていたビジョンはよく分かりませんでした」みたいな感じで(笑) 毎年上司・同僚・部下から評価してもらって、それをもらいます。

対談風景

リクルートの社風・文化

水谷 そもそも論で言うと、それが高いレベルで運用出来ている、というのが強みだと思うのですが、それは元々のリクルートの社風ですかね?「自己開示」や「成長する」という事に対するベースが揃ってますよね。

今村 そうですね。揃っていると思います。企業カルチャーや経営理念に近いですが、リクルートは何かのモノや工場を持っているわけでもない「人の会社」なんですよね。 その中で「一人ひとりの個を尊重する」というのが元々の文化。そしてそれに対して「期待しあう」。同僚同士も、部下と上司も。そういう文化を社長から従業員同士まで理解しているからこそ、55年以上も企業文化として定着しているのではないかと思います。

水谷 しかし話をお聞きしていると、非常に上司力を問われますね。しっかり見て、しっかり伝えてあげないと部下の気づきが減ってしまうということですよね。

今村 仰る通りですね。「人材開発委員会」だけではなく、他にも表彰する・褒めるということもリクルートの文化なのですが、誰をどうやってほめるか、という部分への力の入れ方は、他の会社から見たら異常に見えると思います。マネージャー同士が部下の表彰したい案件をプレゼンし合い、その中でTOPを決めていく。上がちゃんと下を見て表出してあげよう、という所が当たり前の文化としてあるので、それを能力開発でもおこなっている、というのが人事評価制度の考えです。

内藤 グループ各社の社長の選任基準って何かあるんですか?結構人材、住宅、販促など領域が違う所から社長が選ばれたりしているイメージがあるんですよね。

今村 先ほどのValues&Skillsで任用されていますね。領域は関係なく、Value&Skillsを満たしている人間であれば、どんな事業でも見ていくことが出来るだろう、と。

曽山 話を聞いていると「事業ドメインのスペシャリスト」の罠と向き合っているイメージがあるのですが、経営者を育てているからどの領域でも大丈夫、という考え方なんですか?

今村 その通りですね。あまり領域を気にしていません。ただ、この先は結構考え方を変えなければいけない、とも思っているんです。IT人材もそうですが、例えば人事・財務などのスペシャリスト、特にグローバルの観点も含めたスペシャリストを育成していかなければいけない、となると、その分野のスペシャリストが見ないとスキル開発がされていかない部分もある。最近はその考えを元に、専門人材としての育成も進めています。

水谷 現状における成功した制度と、今後の課題などを教えてもらえますか?

今村 成功した面で言うと、「全社人材開発委員会」ですね。社長をはじめ、全役員、海外事業会社社長などが一堂に介するのですが、これは成功だったと思います。人材開発の議論内容が成熟している感覚がありますね。それだけでなく、その議論の中で社長・峰岸の経営観や、各々の役員が何を大事にしているか、といった点も自然とシェアされます。先ほどリクルートには人しかない、と言いましたけど、その会社が人について考えるという場、という意味で一種の経営戦略会議にもなっているんです。

水谷 そういう場で社長の峰岸さんはどういうメッセージを発信するんですか?

今村 大きく言うと、非常にカルチャーやビジョンを大切にしており、今後もそういった部分を持っている人間に経営に携わっていってほしいと思っている、ということをよく言います。それ以外には例えば「グローバル人材」「IT人材」に関する議論を積極的におこなっており、本気で会社の方向性を示し、舵を切っているという風に思いますね。

先ほどの質問の課題の部分で言うとグローバルにおける人材開発が挙げられますね。 今までの話は、国内の従業員の話なんです。今グループ全体で3万人。そのうち5000人くらいが海外の従業員になりました。 人事制度や報酬制度などは全く別でやっていますが、将来のリクルートの執行役員候補、として海外のタレントを含めて、どう議論を進めていくのかということは全体としての課題だと思っています。

後編では、サイバーエージェント、ファインドスターの人材育成の考えをお送りします。

プロフィール/敬称略

今村 健一

株式会社リクルートホールディングス 人事統括室 室長(インタビュー時)

1976年、福岡県生まれ。1999年に、東京大学工学部船舶海洋工学科を卒業後、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)に入社。
『じゃらん』の営業職を務める。2003年、経営企画室に異動し、経営企画と人事に携わる。2007年から『タウンワーク』『フロムA』などの事業企画部に所属。
2012年に経営企画室長となり、翌年からグループの人事統括室室長も兼務し、2014年から人事統括室室長に専任。
2016年4月から、米国Iindeed, Inc.事業の人事シニアディレクター責任者として米国に赴任。

曽山 哲人

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長

1974年生まれ。1998年、上智大学文学部英文学科卒業後、伊勢丹に入社。1999年、サイバーエージェントに入社。インターネット広告の営業担当として配属され、後に営業部門統括に就任。
2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任、2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員制度「CA18」に選任、2015年より人事統括本部長に就任し現職。
著書に「クリエイティブ人事」、「最強のNo.2」など。

内藤 真一郎

株式会社ファインドスターグループ 代表取締役

大学卒業後リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。その後ベンチャー企業を経て起業。
少子高齢化の進む課題先進国日本を元気にするのはベンチャーだ!との思いで日本初起業家だけの企業グループを創る。
著書は「ニッチメディア広告術」(タイヤモンド社)「世界で一番起業家とベンチャー企業を創出する」(山中企画)があり、マーケティング・企業経営部門それぞれでアマゾン1位を獲得。
現在は上場企業の社外役員やベンチャー企業の顧問、業界団体の理事などグループ外の活動も積極的に行っている。

水谷 健彦

株式会社JAM 代表取締役社長

2001年、創業直後の株式会社リンクアンドモチベーションに入社。拡大期から上場、M&A強化など様々な成長フェーズを経験し事業責任者、取締役を歴任。
2013年、「Innovate working spirits!」を事業ミッションに株式会社JAMを設立。
事業責任者や取締役としての「リアリティ」と、経験豊富なコンサルタントとしての「再現性」を軸に、組織強化を経営戦略の一つに据えるベンチャー企業様向けに、 組織コンサルティングおよび管理職育成を手がけている。

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