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改革待ったなしの医療、利用者に寄り添うサービスへとテクノロジーが後押しする

テクノロジー

文:長倉克枝

あらゆる情報があふれる現代社会。健康・医療分野でも、IT化によってイノベーションが起こりつつある。

医療や行政の現場では、対面コミュニケーションによる地域の生活者に密着した仕事が日々行われている。しかし、対面や電話、パンフレットや手書きといった従来の情報の伝達・共有法では、増え続ける情報に対する対処が難しくなっていた。

そんなコミュニケーション上の課題を「IT」の力で解決することで、より生活者に寄り添った医療や健康サービスを提供する取り組みが増えている。出産・育児から看護まで、ITによって課題解決に取り組む現場を紹介する。

新米ママの不安を安心へ変える、医師が寄り添うスマホアプリ

初めての妊娠・出産は不安だらけだ。そこで情報を集め始めると、インターネット上に大量に溢れる情報を目の前に、結局何が正しいのかわからなくなってしまう----。こんな経験をした新米ママは、少なくないのではないだろうか?

博報堂DYメディアパートナーズで新規事業に取り組む実吉賢二郎さんの妻もその一人だ。5年前に第一子を妊娠。友人やネットからたくさんの情報を収集した。ネットの書き込みは、「絶対だめ」「やったほうが良い」の両極端なものが多い。ひとしきり悩み、最終的には産婦人科の担当医に聞いて「先生の言うことがやっぱり一番信頼できる」と納得したという。

一方、産婦人科の診察室でも「ネットにはこう書いてあったんですけれど......」と産科医に相談する妊婦は多いという。ネットの情報によって、かえって不安が煽られていることもあるといい、産科医にとっても誤解を解くために説明をする負担が増えている。

産科医からの正しい情報がいつでもどこにでも届けられれば、妊婦にとっても産科医にとっても安心して妊娠期間を過ごすことができるはずだ----。そこで、博報堂DYメディアパートナーズとNTTドコモが共同開発したのが、スマホで情報提供をするアプリ「妊婦手帳」だ。体重やつわりなどの体調管理をしたり、妊娠時期に合わせて生活の疑問や赤ちゃんの成長などを知ることができる。また、病院とも連携しており、通院している病院名などを登録することで、まるで医師が寄り添っているかのようにその時々で必要な情報が届けられる。

妊婦手帳アプリ

妊婦手帳アプリ

「長女を妊娠中の妻を見ていて、信頼出来る医師からの情報提供をタイミングよくできるサービスがあればいいのに、と思っていました」と、「妊婦手帳」の企画を担当した実吉さんは振り返る。

「妊婦手帳」では、病院と提携し信頼できる情報を提供することにこだわった。コンテンツ制作には産科医が関わり、産科医が妊婦に伝えたい情報を漏らさず伝えられるようにした。登録した病院からは、週2本のアドバイスが配信される。内容は、「葉酸を摂りましょう」といった基本的な情報から、病院が実施する両親教室の案内などのお役立ち情報まで。

利用者からの評価は上々だ。アンケートでは、満足していると回答した人が9割を超え、週1回以上開く人は99%にのぼった。「病院から薦められたアプリなので安心できる」という声が多かったという。

行政の子育て情報をわかりやすく伝える

出産のあとは子育てだ。健康診断や予防接種など、子育て中は多くの行政サービスを利用する。ところが、行政業務は通常部署ごとに縦割りになっており、ウェブサイトなどでの情報発信もわかりづらいなと思ったことはないだろうか。

そこで、横浜市金沢区では2013年に子育て情報のポータルサイト「かなざわ育なび.net」を開設した。乳幼児健診や両親教室、保育園入所状況、子育て中に必要な情報を集約して見られるようにした。さらに、パーソナライズ機能があり、郵便番号や子供の生年月日を入力すると、子供の年齢に応じた健診などの情報や、近所の保育所や医療機関の情報を表示することもできる。

かなざわ育なび.net

かなざわ育なび.net

「3人の子育てをしてきて感じたことがあります。例えば区役所に出生届を出すと、子育てに関する大量の情報の冊子やちらしがどばっともらえる。ただ、忙しくて見てる暇ないなと(笑)。そんなに一度にもらっても読めない。ウェブサイトを見ても健康、子育て支援とそれぞれ情報が散らばっていてわかりにくかった。それをうまく繋げられないかなと、思ったんです」と、「かなざわ育なび.net」を企画し運用する金沢区役所の石塚清香さんは語る。

それを当時の金沢区長に提案したところ、2013年度に自主事業として予算がつくことになり、開発が始まった。「開発中は庁内のさまざまな部署にかけあって、データを集めるのが大変でしたね。データはすべて複製・二次利用などが可能なライセンスのもとで公開するというオープンデータを前提としたので、悪用されたらどうするんだ、と言われたこともありました。理解が進むまでが大変でした」と石塚さんは振り返る。

サイトを公開すると、初日からページビュー(PV)が跳ね上がった。メディアで取り上げられるなどして大きな話題になり、公開から2年以上たった今も、PVは区のサイトの中でも高いほうだという。また同市南区から「うちでも作りたい」と要望があり、南区で同じシステムを使って「みなみ・育なび」を2014年に開設した。「かなざわ育なび.net」の好評を受け石塚さんは担当課に異動し、今では本務として運用に取り組んでいる。

「まだ情報量は足りないと思っています。例えば保育園の情報はあるけれど、子育てサロンや園庭開放の情報は載っていない。そういった地域に密着した生きた鮮度の高い情報を、それぞれの情報を持つ担当部署と連携し、さらに提供できるようにしていこうとしています」と石塚さんは意気込む。ますます便利になりそうだ。

地域と医療をつなぐ、訪問看護をスムーズにする

皆さんは「訪問看護」という分野をご存知だろうか? 入院していた患者は退院して自宅に戻ってからもしばらく療養が必要だ。その療養をサポートするプロが看護師。訪問看護は、病院から自宅に戻っても、看護師が自宅を訪問することで引き続き看護師による療養サポートを受けられる、というもの。少子高齢化が進む中で、今、どんどん需要が高まっている。

だが、電子カルテの導入をきっかけに病院のIT化が進む一方で、訪問看護ステーションでは依然として紙に記録をして報告書を作成するなど、制度化された30年前とあまり変わらないアナログ業務が中心だ。そんな中で注目されているのが、iBowと呼ばれる訪問看護アプリだ。

「これからの時代は、在宅での療養が増え、訪問看護ステーションはより重要な位置付けになります。私は電子カルテのシステム開発をする中で多くの現場を見てきましたが、病院や介護の現場ではどんどん電子化が進んでいくのに、訪問看護だけが孤立している印象でした。でも、現場は忙しそうだし大変そう。そこで、タブレット端末を使ってカルテを書いて共有できるシステムを開発することにしました」(iBow訪問看護システムを開発した、eWeLL(大阪)の北村亜沙子さん)

よどきり訪問看護ステーションの石井さん

よどきり訪問看護ステーションの石井さん

システムを導入した訪問看護ステーションのひとつ、大阪のよどきり訪問看護ステーションの石井さんは、iBow導入の背景についてこう語る。「訪問看護ステーションは今、爆発的に増えています。ここ1〜2年でステーションのあり方が大きく変わり、情報共有が重要になってきました。特に大阪では、本体のステーションを持ちながら、他所に事務所を展開するサテライトと呼ばれるものが増えているんです。うちも2拠点ありますが、紙のカルテでは情報共有が難しいので、電子化してシステムを導入する必要性を感じていたんです」

同ステーションは、これまで淀川キリスト教病院に属していたが、昨年10月によどきり医療と介護のまちづくり株式会社を設立し、独立。独立と同時に導入したのが、訪問先でiPadなどのタブレット端末を使って記録や報告書を作成したり、カルテを共有したりできるiBow訪問看護システムだった。

iBowを提供するeWeLLでは現場の電子化を推進するために見落としがちな課題を「操作そのものが簡単である事」として捉え、スマートフォンに慣れ親しんだ世代はもちろん、デジタルデバイスに抵抗がある人々でもストレス無く簡単に扱えるインターフェースを目指したのだという。

「勤務する看護師十数名に使ってもらい、使い勝手がよく違和感なく使えたことからiBowを選びました。使ってみると、カルテに入力したあとが全然違います。紙のカルテは当然ひとつしかないので、他の人が見ていると見られませんでした。それがいつでも閲覧できるようになり、仕事の効率も上がりました。また、これまでは手書きの記録や報告書を月末にパソコンに入力し直して印刷していたのですが、その手間もかなり楽になりました。」(同 石井さん)。 ITの力によって情報共有を大きく改善することで、訪問看護の質も上がりそうだ。

iBow 訪問看護アプリ

iBow 訪問看護アプリ

生活現場のコミュニケーションを円滑に

ITはこれまでもオフィスや工場など働く現場でのコミュニケーションを円滑にしてきた。一方で、医療や生活に根ざした現場での専門家と生活者とのコミュニケーションはなかなか効率化されてこなかった。だが、情報量は増え続け、従来の対面や紙媒体などによるいわば「泥臭い」コミュニケーションでは限界に達しつつある。

そんな中、IT活用によりコミュニケーションが円滑になることで、生活者にとって利便性が大きく向上する事例が相次いでいる。増え続ける情報に対応して生活者が暮らしやすく生きやすい社会にしていくために、今後も生活者に寄り添うようなIT活用が拡がっていくだろう。

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