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【後編】リクルート・サイバーエージェント・ファインドスター。各々が描く「経営人材育成」と「制度」のカタチ

Recruit , マネジメント

文・写真:MeetRecruit編集部(写真は左から曽山氏・内藤氏・今村)

経済産業省のデータでは、日本には大小含め421万の企業があるという。もちろん、一人の経営者が複数の会社を経営している場合もあるだろうが、それを含めても400万人近い経営者が世の中に存在している。
企業の永続性を考えると、その400万人の経営者は自らの企業を任せられる後進を育てていかなければいけない。

今回は、新卒を社長に抜擢するなど、大胆な人事施策・人材育成に定評があると言われるサイバーエージェント、そして「日本で一番起業家を輩出したい」という想いのもと、ユニークなグループ経営をおこなうファインドスターグループ、そして「起業家精神」を会社のユニークネスの一つに掲げ、個々人の自主性を引き出す多様な制度を持つリクルートの3社が集まり、経営人材の育成について語り合った。

前編ではリクルートの「経営人材育成」に関しての考えを聞いた。今回はサイバーエージェント、ファインドスター各社の話を聞く。

ファシリテーションは、組織コンサルティングや管理職育成を手掛ける株式会社JAMの水谷 健彦氏でお送りする。

話者:
株式会社リクルートホールディングス 人事統括室室長 今村健一
株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長 曽山 哲人 氏
株式会社ファインドスターグループ 代表取締役 内藤 真一郎 氏

※本文中の肩書きに関しては、2015年12月時点のものです。

サイバーエージェントの場合

水谷 サイバーエージェントさんは経営人材の育成で有名ですよね。その中でも曽山さんがここ10年くらい引っ張ってきた印象があります。

曽山 一番大きいのは社長の藤田含め経営陣が、抜擢をしよう、という考えで実際に事例を増やしてきたことですね。新卒1年目を子会社の経営者に抜擢したりとか。リクルートさんのやり方はよく勉強させて頂いているんですが、考え方の根本は同じで、実際任せてみないとそういう人材は育たないんですよね。

水谷 新卒を抜擢する、というのはいつくらいから初めたんですか?

曽山 サイバーエージェントが創業したのが1998年で、最初に新卒が抜擢されるというエポックメイキングは2003年にありました。彼はその時に子会社を作って社長になったのですが、今は専務という形で本社の経営に携わっています。

水谷 2003年にその判断をしたのがすごいですよね。

曽山 実は本人はそのタイミングで辞めようと思っていたみたいで、藤田の元に辞めるつもりで行ったら、半ば説教をされて子会社の代表を任された、と言っていました(笑) 外に出てチャレンジするつもりならやってみろ、という事で代表になったと。これは「直談判型」ですね。ただ、直談判型は回りの人間からするとプロセスが見えないんです。当時はまだ制度というよりは人の想いで進んだ形ですね。

転機になったのが2006年。この年から「あした会議」という役員が旗振りをして新規事業開発をおこなうという制度が始まりました。その流れから幾つかの事業・会社が生まれて、例えばそこで出来た「CyberBuzz」という会社には新卒2~3年目の社員が社長や役員に抜擢され、事実上会社のプロセスの中で新卒抜擢が起きたのはこのタイミングでした。

現在では新卒入社の社員で子会社の社長、取締役をしている人間が60名ほどいるので、これは世界でもTOPレベルの抜擢事例数だと思います。

水谷 それは藤田さんの価値観なんですか?

曽山 そうですね。任せてやらせてみる。どんどん大きな仕事を任せて、放っておく。僕らは「手取り足取り教えて経営者が育つ」とは思っていません。むしろそれで育ってくれるなら、そっちの方が簡単ですね。

そもそも起業家やイノベーターと言われる人々は、既成概念に抗って進めていける人だと思います。なので、もちろんサポートはしますが、本人に「決断経験」をさせることが重要ですね。

水谷 その「任せた会社」とサイバーエージェントの距離感はどのくらいなのでしょうか?

曽山 まず子会社が出来ると、サイバーエージェント本体にいる『CA8』と呼ばれる8人の取締役のうち誰かが相談役としてその会社の取締役に入ります。会社自体は新卒数年目の抜擢された代表が1名、その同僚などで取締役を置き数名で立ち上げる事が多いです。

その中で、例えば月に1回~2回、役員会があればそこに本体取締役も入り、大きな経営課題に対しての確認をしたり、大きな間違いが見えればそれに質問をしたりしています。そこである意味でのガバナンスを効かせる。

ただ、様々な局面で相談にきても、結局そこでは「じゃぁお前はどうしたいんだ」と聞くだけなんですね。お前が社長なんだから、決断はお前がしろ、という風に伝えています。

水谷 普通に想像すると、相談された側は「こう思うよ」と言ってしまいますよね。 そうすると相談した側は「そちらに意思決定されたのだ」と思い込んでしまう、という事があると思うのですがその辺はどのようにしていますか?

曽山 基本的には答えを出すような言い方はしないようにしています。結局、自分たちで決めて、自分たちでやりきった方が良い結果が出るんですよね。他人に決められてしまうと、やりきらなかったり逃げたりしてしまう。そういう意味で解答せずに「ダメと言われなければどんどん進めてほしい。勝手に決めて勝手にやってほしい」ということを求めています。勝手にやった量が多ければ多いほど認められていると考えていいです。

水谷 人によると思うんですが、その場合報告もせずにどんどん進める人間の方が良いと判断されるんですか?

曽山 そこは難しい所ですね。基本的には「報連相」が少ない人間は大体上手くいかないです。

恥ずかしい、格好悪い、ミスを責められたくない、みたいな自分本位の人間の方が「報連相」が少なくなるというのが僕らの見立てでして、出来る経営者やマネージャーほど「報連相」が上手です。 ただ、その方法がお伺いを立てる形ではなく、「こうやります」という報告なんです。「違っていたら突っ込んでください」というスタンスでどんどん決めてやっている人が多いです。

そもそも抜擢して任せている1年目2年目の経営者は、もちろん我々としても未熟だと考えています。ただ、可能性は非常にある。 ならば、その未熟な面はどんどん上から学んでほしいと思っています。

対談風景

サイバーエージェントから見る、上手くいく経営者上手くいかない経営者の条件

水谷 上手くいく若手社長、上手くいかない社長両方いると思うのですが、配分としてはどんな感じですか?

曽山 今まで90社子会社を作って60社残っている。そういう意味では割と上手くいっている方ではないかと思います。「あした会議」からは18社が生まれ、11社残っています。こちらもそれなりの打率なのではないかと。

成功しなかった場合でも、挑戦するためのセーフティネットとして、会社の社是として「挑戦した結果の敗者にはセカンドチャンスを」という言葉があります。 他にも社内ヘッドハンターがおり、事業が解散しそうだ、という噂を聞くと面談やランチをして、今後の本人の希望を聞いて行き先を考えたりしている。 他にも、『CA8』である役員がその子会社の取締役に入っているので、その範疇の中で次を決めたりもします。

大体の人は1回失敗すると、同じ失敗をしなくなります。失敗した人材ほど次の生産性が非常に高いことがあります。そういった意味では失敗した人の経験は財産ですので、社内の色々な事業から声がかかりますね。

水谷 相談をしてこない人間は上手くいかないと見立てている、とおっしゃっていましたが、他にも共通要素というのはあるんですか?

曽山 決められない人は上手くいかないですね。社長なのに決められない人。どんな人でも経営者になりたての時は未熟です。もし私がどこかの子会社の経営者になったとしても未熟です。であれば高速機動で経営をおこなった方が良いです。その時に決断が遅いと、事業運営にも時間がかかりすぎて、上手くいかない事が多いですね。

もう1点、経営者になった瞬間にプレイヤーをやめてしまう場合も大体は上手くいかないです。例えば4人で立ち上げた場合、人数が少ないですから当然社長も営業に行くべきです。そのタイミングから社長然として、最終決済しかしない、みたいになってしまうと、立ち上がりが遅くなってしまいます。

『CA8』のメンバー自体もプレイング役員、と言われているくらいで、今でも自分が最前線に立ったら売り上げを上げられる、というくらい状況を理解していますし、最前線でビジネスの肌感を掴んでおくのも重要です。 もちろん会社が大きくなってきたら経営に時間を割く必要もありますが、立ち上がりとしてはプレイヤーである事が重要ですね。

水谷 今まで抜擢した中でも社長然としてしまった場合があった、ということですか?

曽山 そうです。 経営者の本を読んだりすると、大体「戦略を考えないといけない」「経営をしないといけない」と書いてあります。「自分が最前線に出て稼がないといけない」とは書いていないですよね。現場に出すぎると良くない、みたいに書いてある。 ですが、会社は「売り上げを上げ続けられれば勝ち」なので、自分が最前線で稼ぐ、という選択肢も持って考えてほしいと思っています。

内藤 先ほど60社残っている、と仰ってましたが、その中でスケールした会社としない会社があったと思います。その「スケールする会社」の経営者の特徴、みたいなものはありますか?

曽山 「言う事は壮大、やることは愚直」というキーワードが特徴ですね。

発信するメッセージ自体は壮大で、その大きな夢に人を惹きつけられる人。でも、結果を出せるという事は、足元のやらなければいけない事に対して本当に愚直に取り組んでいる。 これがセットになっているのが一番よくて、どっちかしかない人が結構多いです。「言う事が壮大で、やることも派手」なだけだとあまりよくない場合が多い。壮大なことを言いつつ、それに向けて愚直な行動が出来ること。そういう意味でも前線に出てプレイヤーも出来る経営者は強い。

他に、「寡黙だ」とか「見せ方が上手い」とかそういった点での適正はあまりないのではないか、というのが実感値です。当社の子会社の経営者の中でも寡黙な人もいる。代表の藤田自体も任せるのが非常に得意で、大きな声でがんがん指示するタイプではないです。一方で、強いリーダーシップを持っていて声も非常に大きい人でも、経営者としては上手くいかない場合もあります。

実際にどういう経営者が上手くいくか、ということを抜擢した人から聴かれるのですが、この2点が成功者のポイントだよ、と説明すると「自分にも出来るかもしれない」と考えてくれます。

対談風景

水谷 その成功した経営者の「共通した経験」というのはあったりしますか?

曽山 本人の中で「自分でやるんだ」という腹決め・決断が出来たかどうか、というのがまずはありますね。そのあとに「修羅場」の経験を積めたかどうか。修羅場を経験すると、他の事が大したことではなくなります。 そもそも、どんどん攻めていかないと修羅場は発生しません。小さく進めると小さな修羅場しか経験できない。大きな事を言って、どんどん大きなことに挑戦していかないといけない。大きな修羅場を経験出来る人は、大体それ以外の部分でも大きなことをやって成長していける人ですね。

水谷 そもそもの点なのですが、どうやって人選して抜擢しているんですか?

曽山 一番大きいのは、いくつか直談判できる仕組みがあることですね。社内に、新規事業研究会NABRA(ナブラ)という組織があって、そこに新規事業を提案する事が出来ます。 他にも「あした会議」では、『CA8』の役員がそれぞれ自分のチームに4-5名の社員をアサインするのですが、事前に社員が『CA8』のメンバーに直談判していたりします。「自分はこんないいアイデアを持っているから、自分の案を取り上げてくれ」といった形ですね。入社1年目だろうが、その提案が良ければ「あした会議」の中で会社設立を提案したりします。

直談判以外には、役員の合宿が3か月に1回くらいあるのですが、その中で新しいビジネスドメインに参入しよう、という話になる場合もあり、その場合は社内ヘッドハンターとも連携をして、最適な人選をおこないます。これは経営陣から発生する場合ですね。

水谷 割合としては直談判とどちらが多いんですか?

曽山 まずは「あした会議」から生まれる場合が一番多いです。役員と社員が人選まで一緒に考える、というパターンです。その場に呼ばれていなくても社内MVPなどで名前が知られていて、急に「お前社長やってね」と抜擢される場合もあります。自薦だけではなく、他薦もある場です。

そのほかにも、社内ヘッドハンターが定期的に全社員にアンケートを取り、将来やりたいキャリアに「経営者」と書いている社員をリスト化しています。その人に打診する場合もあるので、これも自薦に近いですね。

水谷 たまに「お前が立候補するなよ」みたいな人間が自薦したりしませんか?

曽山 もちろんそういう場合もあるにはありますが、まずは「意思表明すること」を一番大切にしています。発信する事で得られるものは多いです。お前が言うなよ、みたいな場合であれば、何が未熟かを自覚して、それが解決出来れば一歩進むかもしれない。 逆に、言ってみたら、じゃあやってみなよ、となるかもしれない。そういう意味で「意思表明」は重要だと思っています。

水谷 そうやって出来たグループ会社はどこまで権限移譲されているんですか?

曽山 給与も自分で決めさせています。もちろん『CA8』の役員が相談役として入りますが、例えばとある会社は藤田が相談役に入って、内定者4人で会社を立ち上げました。彼らが最初悩んだのは「会社のPLを作れ」と言われたときに、PLの中の「役員報酬」をどうすべきか、ということ。 藤田にメールで相談した所「それは勝手に決めて」という1行だけが返ってきた、というんですね(笑)
そこで彼らも、そもそもPLとは何か、キャッシュフローとは何か、という事を理解したのです。結局彼らはサイバーエージェントの新卒の初任給よりも下げたい、と相談してきました。当初のビジネスプランではサイバーエージェント新卒の初任給では会社が回らない、と。 しかし、それなら初任給を最低ラインにしても早く会社が回るようにするにはどうすればいいかを考えてくれ、と返しました。 こういった会話が彼らの成長につながりますし、その考えを彼らが自分で導き出したこと自体が良い事だと思いますね。

サイバーエージェントのキャリアパス、への考え方

水谷 今度は経営者側の制度をお聞きしたいと思うのですが、『CA8』は「取締役8名のうち、2年に1回必ず2人交代」という考え方ですよね。それが運用されているのがすごいですよね。

曽山 この8年で4回やったので、8人入れ替わったことになりますね。元々『CA8』という仕組みを作った時に、「役員」という役職を「キャリアパス」にしよう、と意思決定したことが一番大きかったです。上場企業の役員をやって、2年経ったらまた現場に戻ったり新しい事に挑戦して、そこで結果を出せばまた役員に就くこともある。一般的に上場企業の役員になることは、ある種「アガリ」に近いと思うのですが、そうはさせなかった。

私は6年間『CA8』を務めましたが、先日その入れ替わった元『CA8』の8人で集まり、裏CA8という飲み会をしました(笑) 8人中5人はグループ会社に残っていますし、卒業した3人も『CA8』の実績を買われて大手企業から出資を受けていたり、あるいはVOYAGE GROUPの宇佐美社長も『CA8』の一員だったのですが、その後MBOして上場されたりと、それぞれの形で活躍して格好いいですよね。

水谷 そもそも、なんで役員がキャリアパスである、という意思決定をしたんですか?

曽山 元々は役員などの「上のポジション」が詰まっている、という社員からの声が起点ですね。ベンチャー企業なので、『CA8』の制度が出来たときはまだ役員の年齢が32歳とか、非常に若いんですよ。そうすると、若手社員としては、もう上のポジションが固定されてしまって、自分にチャンスはないと思ってしまうのです。 ある日、藤田が参加した飲み会で社員たちが、上が詰まっていてキャリアプランが見えないということを訴えたみたいなんですね。その話を受けて、役員も流動的にして入れ替わっていく、という形を考えたのが始まりです。

一方で、自分が『CA8』のうちの一人になったとしても、すぐ降ろされるかもしれない、という不安は当然あります。ポジションに固執してしまうことがないように制度設計だけはすごくしっかり考えましたね。 結局は「役員もキャリアパス」として捉えて、決して降格ではなく、今後出戻りで複数回役員をおこなう人間も出てくるだろう、と決めました。

今村 明文化されて人事規定に書いてある、という訳ではないんですが、リクルートの中に "Keep Young" という思想があるんです。Youngは若さというよりも、チャレンジスピリットをなくさないという意味なんですが、その「役員もキャリアパス」という話の中でサイバーエージェントさんのそういった精神が体系化されて制度になっているというのがすごいな、と思いましたね。その制度の行く先というのは非常に興味深いです。

曽山 サイバーエージェントの中でも "KeepEnergy" というワードがあります。年齢がどうこうよりも、エネルギーがある人たちの集団にしたい、という思いです。価値観を崩す人は若かろうが年上だろうが徹底的に厳しくしていくように会社の中で設計がされていますね。

ファインドスターの場合

対談風景

水谷 まずは社名の事についてなのですが、「ファインドスター」なので、一人ひとりが輝ける、みたいな部分に思いがあるのではと思うのですがいかがでしょうか?

内藤 元々一人ひとり「星」を持っている。それを見つけられるようにしたい、というのが元々の社名に込めた思いです。 自分自身が元々リクルートグループ出身なんですが、僕がいた時代は例えば会社の文化に合わずに辞めてしまい、けれどその後外部で活躍される方とかが多かったんです。そうすると、辞める「人」自体が問題なのではなく、一人ひとり良いものを持っているのに、それを輝かせることが出来ない「制度」に問題があるのではないか、と思って立ち上げたのが今の会社です。 一人ひとりがもつ潜在能力を見つけられる会社になりたい、と思っています。

水谷 100社200人の経営者を開発したい、というメッセージを掲げていますが、そこも似た想いから発生しているんですか?

内藤 そこは多少違う観点も入っていて、親子逆転してスケールする例って、ほぼ遠心力経営だと思っているんです。親会社を見返してやろうと頑張って超えた例でいうとNTTグループのDocomoだったり、ヨーカドーグループのセブンイレブン、富士通とファナック、プラスとアスクルなど、スケールした会社経営というのは「求心力」ではなく「遠心力」で成り立ってますよね。 その思いがあるので、うちはグループ会社の社長はすべて一旦退職してもらって、起業家としてやってもらっています。

水谷 そのスタイルも結構独特ですよね。

内藤 そうですね。場合によっては株もマジョリティで持ってもらい、オフィスなども全然別の場所にする。むしろ「交わらない」ほうが上手くいくのではないか、というのが現段階の仮説です。あくまで仮説ですけどね。

水谷 基本的には自分で手を挙げた人が選ばれるんですかね?

内藤 そうですね。基本的には自分で手を挙げた人の方が多いです。場合によってはこちらから「そろそろ辞めて事業持っていったら?」と声をかけた事もありますが、基本は手上げ制です。

水谷 そういう人選はやはり遠心力経営をするための「反骨心」みたいなのを見るんですかね?

内藤 まだまだケーススタディが多くはないですが、基本的にはうちで活躍した人に任せてますね。もう1点、ベンチャースピリットとして「リスクを取れるか」という点を見てます。 先ほどの曽山さんの話で、VOYAGE GROUPの宇佐美さんの話がありましたが、サイバーエージェントさん的にはあれは全然ありなんですかね?今後も自社から飛び出して、それこそ一部上場するような会社が出てきてほしい、という想いですか?

曽山 もちろん嬉しいことですが、そんなに容易なことではないですよね。宇佐美社長とVOYAGE GROUPの社員たちが非常に優秀だったから出来たことだと思います。

内藤 リクルートグループにいた時も、結構反骨心を持ってやっている事業が多かったんです。僕がリクルート人材センター(現リクルートキャリア)にいたときは打倒『ビーイング』でしたし。

今村 多いですね。創業事業である「新卒採用ビジネス」というモデルに対して追いつけ追い越せの精神でやってきた歴史があります。

内藤 元々「ベンチャー」という概念自体が、大企業が持つ大きな既得権益を崩していく、という反骨的なスピリットがベースなので、そういったものを育てていきたいんですよね。

水谷 普通の経営者はどうしても手元に置いておいたまま、子会社なり事業が育ってほしいと思っているが、手放していくというのが素晴らしいと思います。

内藤 どちらかというとそっちの方が「合理的」だと思ったんです。シナジーを追うよりも最終的に各々スケールしてくれたほうが大きくなる。今伸びている企業って、例えばリクルートさんの競合にせよなんにせよ、ベンチャーから始まって大きくなってきている企業ばかりですよね。そういった意味では、社会にインパクトを残せるのはそっちかな、と。

昔の経験として、学生時代にリクルートで働いていたら、各営業が各々バラバラの商材を売っている、という状況が非常に非効率に見えたんです。最終的にリクルートの売り上げになるのであれば、営業がどの商材でも売れるようになればいいのでは?と。 それを当時の上司に伝えたら「内藤、人はそんなに器用に出来ていないんだ。結局、一つの商材を突き詰めて考えた方が売れる」のだと言われました。確かにそうなのかもしれない、と思った時からあまり「シナジー」という言葉を信じていなくて(笑) 人一人の中ですらシナジーが効かないのに、事業間・会社間でシナジーなんか効くはずない、と。理想論ではもちろん営業が色々な商材を売れる、とか、企業間でシナジーが効く、という方が良いと思いますけど、実態はそうなのかな、と思ってます。

今村 リクルートの商材って、昔は雑誌で、そこからフリーマガジンになり、ネットにシフトしました。よくメディアからの取材で、そのスイッチをどうやって上手く進めたのか?とよく聞かれるんですよね。
答えのひとつは「社内で競合させる」なんです。例えば『フロムエー』があったのに『タウンワーク』を作る。『フロムエーナビ』というWebサイトもまた別に作る。そして各々に事業責任者を置く。そういう意味では似た感じで、個々が最適な方法を考え、実践していく方が上手くいくんです。

曽山 サイバーエージェントとしては「求心力」も「遠心力」も両方追っていますね。会社経営における唯一の是は「企業規模・業績が伸び続ける」ということです。遠心力を効かせて任せた方がよさそうな人材には、そういった任せ方をするし、100%子会社などには人材もノウハウもどんどん提供して、密に連携して進めるという風にしています。 どちらが上手くいくかは今後の分かってくるのではないでしょうか。

水谷 内藤さんの今後5年くらいのビジョンはどういったものでしょうか?

内藤 これまでは100社、起業家を生むことを考えていたんですが、最近は小さな会社を生んでも社会に対してインパクトがないな、と思い100億300億と大きくスケールする会社を作るにはどうすべきかを考えています。 世の起業家って、母数で言えばスケールしない10人くらいの会社が大半なんですよね。ほんの一握りの大きな企業の起業家だけが目立っている。ただ、その残り9割の人が優秀じゃないと聞かれるとそうではないと思います。多分、スケールするビジネスに出会ってなかっただけなのではないかと。優秀な起業家と、スケールするビジネスをマッチングする、という事がしていけると非常に面白いのではないか、と今は思っています。

今後求められる人材

曽山 一つキーワードになるのは、プロフェッショナル化。専門性が認められる、というのは働く側の安心感にもつながります。 サイバーエージェントでは、そこに「組織貢献」という点を含めて見ています。会社に貢献できるプロは会社側としても非常に価値が高い。まだワードを定めているわけではないのですが「組織貢献型プロフェッショナル」のような人を今後どう作っていけるか、というのが大きな部分ですね。

今村 リクルートの中にリクルートワークス研究所、という研究機関があります。その中での課題感として、日本の会社社会では「プロフェッショナル」が中々評価されづらい、という研究結果があります。それを認められる企業をどんどん増やしていきたい、という思いはありますね。経営者、というのも「プロ」の一種なのでは、と捉えていて、その横に営業のプロ、という人種がいる、という考え方ですね。

プロフィール/敬称略

今村 健一

株式会社リクルートホールディングス 人事統括室 室長(インタビュー時)

1976年、福岡県生まれ。1999年に、東京大学工学部船舶海洋工学科を卒業後、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)に入社。
『じゃらん』の営業職を務める。2003年、経営企画室に異動し、経営企画と人事に携わる。2007年から『タウンワーク』『フロムA』などの事業企画部に所属。
2012年に経営企画室長となり、翌年からグループの人事統括室室長も兼務し、2014年から人事統括室室長に専任。
2016年4月から、米国Iindeed, Inc.事業の人事シニアディレクター責任者として米国に赴任。

曽山 哲人

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長

1974年生まれ。1998年、上智大学文学部英文学科卒業後、伊勢丹に入社。1999年、サイバーエージェントに入社。インターネット広告の営業担当として配属され、後に営業部門統括に就任。
2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任、2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員制度「CA18」に選任、2015年より人事統括本部長に就任し現職。
著書に「クリエイティブ人事」、「最強のNo.2」など。

内藤 真一郎

株式会社ファインドスターグループ 代表取締役

大学卒業後リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。その後ベンチャー企業を経て起業。
少子高齢化の進む課題先進国日本を元気にするのはベンチャーだ!との思いで日本初起業家だけの企業グループを創る。
著書は「ニッチメディア広告術」(タイヤモンド社)「世界で一番起業家とベンチャー企業を創出する」(山中企画)があり、マーケティング・企業経営部門それぞれでアマゾン1位を獲得。
現在は上場企業の社外役員やベンチャー企業の顧問、業界団体の理事などグループ外の活動も積極的に行っている。

水谷 健彦

株式会社JAM 代表取締役社長

2001年、創業直後の株式会社リンクアンドモチベーションに入社。拡大期から上場、M&A強化など様々な成長フェーズを経験し事業責任者、取締役を歴任。
2013年、「Innovate working spirits!」を事業ミッションに株式会社JAMを設立。
事業責任者や取締役としての「リアリティ」と、経験豊富なコンサルタントとしての「再現性」を軸に、組織強化を経営戦略の一つに据えるベンチャー企業様向けに、 組織コンサルティングおよび管理職育成を手がけている。

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