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【前編】バルミューダ 寺尾玄が語る、変化とイノベーションを生みだすアイデア力

クリエイティブ , リクルート

文:小山和之 写真:佐坂和也

3万円の扇風機、2万円のトースターなど、高価格でありながら高性能・高品質な製品と共に躍進を続けるバルミューダ。同社代表取締役社長の寺尾玄氏が語る、アイデアを生み出し続ける力とは。

2010年に発売された3万円の高級扇風機「GreenFan」を皮切りに、加湿器や空気清浄機、ヒーターなど、さまざまな革新的プロダクトを生み出すバルミューダ。昨年5月に発売された2万円のトースター「BALMUDA The Toaster」も一時品切れになるほどの人気を博している。

一貫してイノベイティブなもの作りを続けているようにみえる同社だが、当初は良いものをつくる企業として立ち上がり、「GreenFan」からは必要とされるものをつくる企業、そして「BALMUDA The Toaster」では体験をつくる企業へと変化を続けている。

バルミューダのアイデアは果たしてどのように生まれるのか。アイデアの源泉を探る。

寺尾玄

売れないものは不要なもの。必要なものは必ず売れる

ー バルミューダの名を世間に広めた「GreenFan」ですが、製品を作るにあたっての最初の気づきはどのようなところから得たのでしょうか。

「GreenFan」を開発した2009年当時、我々は商品が全く売れない危機的状況に陥っていました。リーマンショック前までは高性能なPC冷却台やLEDデスクライトを作りそこそこは売り上げていたのですが、それがパタっと止まってしまった。なぜものが売れないのか。考え抜いた結果たどり着いたのは、我々は人に必要とされてないものをつくっていたんだという結論でした。必要とされるものは必ず売れます。逆に、必要とされないものはどんな良いものでも絶対に売れません。そこから、必要とされるものとは何かを考えはじめました。

アイデアの土台になったのは地球温暖化とエネルギー問題でした。温暖化がすすめば夏はもっと暑くなります。しかしエネルギー問題でいままでのようにエアコンは使えなくなる。そのとき、扇風機が改めて必要とされるのではないかと考えました。ただ、単純に良い扇風機を作っても必要とされるとはいえません。必要とされる扇風機とは何かをより具体化する必要がありました。

まず既存の扇風機の課題をあぶり出しました。人は涼しさを求めて扇風機を使いますが、既存の扇風機はあまり涼しくありません。既存の扇風機は「涼しさ」ではなく「風」を送っているだけだからなんです。風と涼しさは近いようで違う概念です。これを一致させて涼しい風を送れるようになれば、必要とされる扇風機になると考えました。

次に涼しい風とは何かを考えました。涼しく心地よい風はどこにあるかを考えたときに、私は自然に吹く心地よいそよ風にヒントを見つけました。自然の風と扇風機の風の違いを調べると風の形状が異なることがわかりました。自然の風は面で移動するのに対し、扇風機の風は渦状なんです。扇風機から自然の風と同様の面で移動する風を送り出せれば、必要とされる扇風機になると考えました。

最初に必要とされる製品は何かを考え抜いてゴールを設定し、あとは羽根やモーターといった技術的な部分を追い込んでいきました。

寺尾玄

3万円の扇風機を誰も信じてくれなかった

ー 「GreenFan」の発売で一番苦労されたのはどのようなところでしたか。

資金調達を含めた事業化ですね。扇風機を作るには6,000万円必要でした。しかし当時のバルミューダは年商4,500万円で、赤字が1,400万円、銀行からの借り入れが3,000万円。かつ、注文が止まっている状態です。そんな会社に6,000万円貸してくれる銀行はどこにもありませんでした。

銀行以外にも、助成金などさまざまな手を尽くしたのですが全てだめでした。3万円の扇風機が売れるなんてその時は誰も信じてくれなかったんです。そのなかで唯一我々の製品を認めてくれたのが、扇風機のモーターを製造するメーカーの社長さんでした。その会社には扇風機自体の製造とモーターの供給をお願いする予定だったのですが、社長さんは資金調達できない我々の姿をみて、「試作品を1台作ってこい。試作品を見れば銀行も見る目が変わるだろう」と必要な費用約400万円を全て立て替えてくれたんです。でも私は出来上がった試作品を持って、銀行ではなく販路を回ったんです。いままでの反応を見て銀行は絶対に貸してくれないと思っていましたから。

販路でも特に商品決定が早いカタログ通販を中心に回りました。カタログ通販はライティングや編集が入るので、半年前に商品を決めて絶対動かせないんです。そこに試作品を持ってプレゼンに行ったところ、「確かに面白いですね。何台売れるかわからないですが、やります」といくつかの会社さんに発注は無理でも内示書をいただけました。3、4日で約2,000台の内示書を集めて、モーター屋さんのところに帰りました。

集めた内示書を片手に私は社長さんにお願いしました。「すみません、銀行には行きませんでした。その代わり販路を回って注文を取ってきました。もう注文が来てるんです。この勝負絶対勝てると思います。私も人生賭けてます。6,000万円立て替えてください」と。

社長さんはしばらく黙った後「しょうがねえな、こうなったら」と言って6,000万円の借り入れを起こして立て替えてくれたんです。あの社長さんがいなかったら、いまのバルミューダも「GreenFan」も存在しなかったでしょう。

GreenFan

アイデアはどのようにして生まれるか

ー 製品のアイデアはどのように生みだしているのでしょうか。

素晴らしいアイデアは、いま知っていることの組み合わせだと私は考えています。大事なのはその組み合わせ方で、他の人が思いつかないようなユニークな組み合わせ、上手い組み合わせであればあるほど、良いアイデアになりやすい。

ー 良いアイデア、つまり良い組み合わせを見つけるためにはどうすればいいのでしょうか。

とにかく様々な組み合わせを考えることです。組み合わせを考える力には2つの要素があります。1つは「組み合わせる技術」、もう1つは「ものを知ること」です。

「組み合わせる技術」は良い組み合わせを見つけるために欠かせないスキルです。この技術は訓練することができます。1人で連想ゲームをするんです。「GreenFan」でいえば、涼しい、風、扇風機といった具合にです。何か気になるものを見たときに連想するようにしたり、時間がある時は目に入るもの全てで連想するようにする。このスピードを日頃から高めておくことで、会議中でも、普段の生活のなかでも、良い組み合わせを見つけやすくなります。私自身いまでもこれは心がけています。

もう1つ、「ものを知る」のは、多くのことを知っていればいるほど組み合わせられる手札が増えるからです。ものを知るためには、さまざまなものごとに興味をもたなければいけません。ものごとに興味を持つ根源には、世界に対しての興味がある。そして、現状を変えたいと思う人であれば、おのずと世界に対して興味を持っているはずです。

変えたいと思っている対象を知りたくないなんて人はいません。その興味をしっかりと知見に変えることです。自分が世界に対して興味を持っていることをはっきりと認識し、あれもこれも全部知るくらいのつもりでものごとを知ろうとする。そうすれば自ずと物知りになりますよ。

私自身、世界一の物知りを目指しています。それは意識的にではなく、さまざまなことに興味があるからです。興味が知見になり、革新の種になることを経験しているからです。

後編 に続く)

【前編】バルミューダ 寺尾玄が語る、変化とイノベーションを生みだすアイデア力

  1. 前編
  2. 後編

プロフィール/敬称略

寺尾玄(てらお・げん)

1973年生まれ。17歳の時、高校を中退。スペイン、イタリア、モロッコなど、地中海沿いを放浪の旅をする。帰国後、音楽活動を開始。大手レーベルとの契約、またその破棄などの経験を経て、バンド活動に専念。2001年、バンド解散後、もの作りの道を志す。独学と工場への飛び込みにより、設計、製造を習得。2003年、有限会社バルミューダデザイン設立(2011年4月、バルミューダ株式会社へ社名変更)。同社代表取締役。

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