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高評価額のテック企業「ユニコーン」を生み出すニューヨーク、多様なスタートアップコミュニティの魅力

イノベーション , グローバル , スタートアップ , テクノロジー , 北米 , 投資 , 起業

文:佐藤ゆき

米国でスタートアップシーンが盛り上がっている場所といえば、トップにくるのはやはりサンフランシスコ・シリコンバレーがあるベイエリアである。それは間違いないが、一方で東側のニューヨーク市でもテックスタートアップシーンの勢いが増しており、注目度が上がっている。

スタートアップを始めたいというニューヨークの起業家は、もはや西海岸を目指す必要はなく、資金調達から人材採用まで地元で完結できる起業環境が整っているとの声も聞こえる。

そんなニューヨークから生まれているスタートアップや資金調達環境、そして広大なコワーキング施設の建設も進んでいる注目エリア、ブルックリンの事情などを今回はレポートしたい。

BuzzfeedやWarby Parker...ニューヨークが生んだビリオン企業「ユニコーン」

ニューヨークのスタートアップシーンが世界から注目を集めるきっかけとなった契機のひとつは、2013年にYahooがブログサービスのTumblrを買収したことだろう。買収額は11億ドル。ニューヨークのスタートアップがビリオン以上で買収されたのは、これが初めてだった。

YahooによるTumblrの大型買収によって、ニューヨークが「シリコンバレー、サンフランシスコに次ぐスタートアップの都市」として注目を集めたが、当時はまだ、ニューヨークのスタートアップエコシステムにそこまでの成熟度はないと疑問を呈する声もあった。

国別インターネット人口率(出典元:World Bank、世界銀行)

安価で優良なメガネブランドとしての地位を確立しつつあるWarby Parkerの本社

だが、その後もニューヨークはスタートアップ都市としての成長を続けている。数年後の今、ニューヨークは評価額が10億ドルを超える「ユニコーン」をいくつも輩出している。

たとえば、こんな会社名を耳にしたことがないだろうか? 価格を安く抑え、かつ社会貢献事業などを通じて共感を集め急成長中のメガネブランドのWarby Parker、食材定期購読サービスのBlue Apron、バイラルメディアの BuzzFeed。これらはすべてニューヨーク発の会社だ。

その他、ファンタジー・スポーツのFanDuel、契約者の健康維持に積極関与することで医療費を下げる仕組みをつくっている医療保険のOscar、簡単に近隣の医師を検索・予約できる機能を含んだヘルスケアサービスのZocdocなどもまた、現地発の「ユニコーン」として注目されている。

また、2005年にローンチし、ニューヨーク市を拠点に手作り製品のeコマースサービスを手がけるEtsyは、2015年4月に上場した。

2015年末には、ドイツの大手メディア企業アクセルシュプリンガーが、オンラインメディアを運営するBusiness Insiderを4億4200万ドルで買収。「メディアスタートアップは難しい」というイメージが変わる契機にもなった。

投資家が集まり、資金調達の環境も整っている

さて、スタートアップの成長に不可欠なのが投資家の存在。経験と知見が豊富な投資家が身近にいる環境ほど、スタートアップは良いタイミングで支援を享受でき、うまくいけば成長ができる。

Union Square Venturesは、マンハッタンのダウンタウン、その名の通りユニオンスクエアに拠点を構え、数々の投資をおこなってきた。ベイエリアとのつながりも深く、のちにIPOを遂げたTwitter、ソーシャルビデオゲームのZyngaに投資をしたことでも知られる。Yahooに買収されたTumblrにもIPO前に投資をした。

Union Square Venturesがこれまでに行ってきた205件95社への投資のうち、IPOは5件、買収によるエグジットは23件と、同社はその先見性の高さと手練によって、ニューヨークのスタートアップシーンにおける資金調達環境を引っ張ってきたといっていいだろう。

国別インターネット人口率(出典元:World Bank、世界銀行)

Union Square Ventures のパートナーであり、著名な投資家 Fred Wilson氏

その他、決済アプリのVenmoや急成長中の女性向けニュースレターサービスtheSkimmに出資したGreycroft Partners、Insight Venture Partners、Thrive Capitalなどもニューヨークに拠点を置くVCとして有名だ。

エンジェル投資家もニューヨークのスタートアップに注目しており、積極的に投資をする人は多い。

ニューヨークに拠点を置くVCで、前述のWarby ParkerやBlue Apronにも出資しているBrooklyn Bridge Venturesを創業したCharlie O'Donnell氏は「3、4年スパンのエグジットルートにいる会社は数多くある」とコメントする。

そんな彼も、もはやニューヨークのスタートアップのファウンダーは起業のためにベイエリアに移る必要がなくなっているという。スタートアップのファウンダーにとって大事なことは、採用・資金調達・顧客へのアクセスだが、この3点をニューヨークの環境は満たしていると考えるファウンダーは多いという。

Partnership for New York Cityの調べによれば、2015年にニューヨークに拠点を置くスタートアップがベンチャーキャピタルより調達した資金は、前年より82パーセント増加している。

最近では、ハフィントンポストの元コーファウンダーであるKen Lerer氏とThrillist mediaのCEO Ben Lerer氏が運営する投資ファンドの Lerer Venturesが、1億1300万ドル規模の大型ファンドをクローズしている。通常、メディア事業への投資をためらうことが多いVCではあるが、Buzzfeed、Vice、Business Insiderといった成功メディアを生み出したニューヨークの可能性を見込んだものだ。

一方で、QuirkyやFab.comなど、大きな資金調達をしたにもかかわらず事業をクローズした「失敗」ケースもあるが、別の見方をすれば、リスクに対する寛容度が高い環境が築かれているとも見ることができるだろう。

マンハッタンを越え、ブルックリンにまで広がるスタートアップコミュニティ

また、スタートアップが起こるエリアも裾野を広げている。

2000年代前半からスタートアップに積極的に投資をしてきたVCのUnion Square Ventures。これまでスタートアップコミュニティは、彼らが拠点を構えるマンハッタンのダウンタウンを中心に築かれきたが、エコシステムが成熟しつつある今、ダウンタウンから離れた金融街のエリアや、さらに対岸のニュージャージーやブルックリンにまでコミュニティは拡がっている。

特に勢いを見せているのが、ブルックリンだ。5億ドルの評価額がついているメディア企業Vice Mediaの拠点や、Etsyの本社もブルックリンにあり、Etsyで働く700名以上の社員のほとんどが、ブルックリンの本社にいる。Etsyの本社があるのは、ブルックリンの西側、イースト川沿いのダンボ地区と呼ばれるエリアだ。もともと倉庫街だった歴史をもつが、今やEtsyの本社だけでなく有名なクリエイティブエージェンシーのHugeなど、多くの新興企業・スタートアップがオフィスを構えるエリアだ。DUMBO Startup Labをはじめとした、コワーキング・インキュベータースペースも多い。

国別インターネット人口率(出典元:World Bank、世界銀行)

Dock 72のレンダリング / S9 Architecture

また、テック企業・スタートアップコミュニティのためのスペース Dock72もまた、2017年秋のオープンを目指してブルックリンで建設が進められている。6万2000平方メートルの巨大スペースだ。グローバルにコワーキング事業を展開するWeWorkもまた、Dock72のテナントに入ることが決まっている。

ブルックリンに拠点を置くスタートアップに特徴的なのは、従来のソフトウェア・ハードウェアといったテック企業の開発する製品を超えた、ユニークな製品を生み出しているスタートアップが多い点だ。フードスタートアップなどローカルなカルチャーに結びついたスタートアップも多い。

ローカルな「インディ食品」を販売するEコマースサイトを運営する Mouth Foods も、ブルックリンに拠点を置く会社のひとつだ。

そのほか、作家のTim Ferriss氏も出資するプロテインバーメーカーのExpo、子供向けの健康的な食品を提供する Little Duck Organicsもブルックリンに拠点を置く。都市農業スタートアップEdenworksはグリーンハウスを置き、グリーンハウステクノロジーとデータツールを組み合わせて室内の野菜栽培の拡大を目指している。

さらに、シード投資家として有名なLerner Hippeau氏もブルックリンに注目中。過去5年で8件以上の出資をしてきた。Union Square VenturesのパートナーFred Wilson氏の妻であるエンジェル投資家のJoanne Wilson氏もまた、ブルックリンのスタートアップに投資をしている。

フードスタートアップや農業スタートアップもあり、マンハッタンに比べれば比較的家賃が安いブルックリンは、実験的でユニークなことをしているスタートアップが多いというイメージだ。

テック一色ではない、多様なカルチャーも魅力のひとつ

こうしてみると、ブルックリンも含めたニューヨークの多様なカルチャーが、ユニークなスタートアップを生み出す土壌にもなっているように思われる。

サンフランシスコからニューヨークへと移住したKevin Rose氏は、元ベンチャーキャピタリスト・連続起業家であるが、彼はニューヨークの魅力について「誰もスタートアップを売り込もうとしていないことだよ」という。「(サンフランシスコは)そこらじゅうに起業家がいて、どのカフェにいっても、彼らが資金を求めている。それは悪いことじゃない。(中略)でも、それを何年も続けてやってきた自分としては、みんな休息が必要だと思うんだよね」

米国の中でも突出したテック企業のエコシステムを築いているシリコンバレー・サンフランシスコに比べれば、その成熟度や資金調達の規模は大きく下回るものの、テックスタートアップシーンが成熟しすぎていない点もまた、逆に新たなアイデアを得たい起業家やバランスの取れたライフスタイルを求める若者には魅力に映る。

テック人材のマッチングサービスHiredのファウンダーの一人Allan Grant氏によれば、ニューヨーク市はエンジニアに人気な都市の上位に位置しているという。FacebookやGoogleも拠点を構えるなど、雇用機会も充実しつつあるという以外に、こうしたライフスタイルや文化も人材を惹きつける要因なのではないだろうか。

Partnership for New York Cityによれば、過去5年でニューヨーク市のテックセクターは29パーセント拡大したという。いまだ、ニューヨーク市全体の経済規模においては4パーセントを占めているに過ぎないが、さらに活気付く兆しは大きい。

2017年夏には、マンハッタンから近いルーズベルト島にコーネル大学のテックキャンパスがオープン予定だ。学生から大企業、スタートアップまで多様な人材のコミュニケーションが促進される「新しいキャンパス」を目指している。

ニューヨークのスタートアップシーンには、まだまだ変化と成長が期待できそうだ。

PHOTO BY
1.ZeroOne(CC BY-SA)
2.Phil Roeder(CC BY-SA)
3.TechCrunch(CC BY-SA)

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