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SPECIAL INTERVIEW

【前編】人と社会を幸せにする"いい会社"って何だろう 鎌倉投信鎌田恭幸×リクルート伊藤綾

ソーシャル , リクルート
SPECIAL INTERVIEW

文:村田くみ 写真:斉藤有美

鎌倉投信代表取締役社長の鎌田恭幸氏とリクルートの伊藤綾が語る、人や地域を幸せにする"いい会社"とは?

"いい会社"を見つけて会社の発展を投資で後押しするーーそんな新たな金融商品が30代~50代を中心とした現役世代で注目を集めている。公募の投資信託「結い2101」を設定・運用、販売する鎌倉投信の代表取締役 鎌田恭幸さんは、国内外の信託銀行で20年以上、資産運用などの経験を積んだ。最後は外資系信託銀行の副社長を務め、2008年に起業した。

一方、リクルートホールディングス ソーシャルエンタープライズ推進室長の伊藤綾は、出版社勤務、専業主婦を経てリクルートに入社し、結婚情報誌「ゼクシィ」編集長として活躍。"定時に帰る編集長"を目指し、子育てと仕事を両立させるための新たな働き方を提案してきた。新たな価値観を見出しながら活躍する二人に、働きやすい会社、人を幸せにする会社とはどんな組織なのか尋ねた。

ー 鎌田さんと伊藤さんは起業または転職で"天職"を見つけて活躍されています。それぞれ今の仕事についた経緯を教えてください。

鎌田恭幸(以下・鎌田)日系、外資系の信託銀行に20年以上にわたり勤務しました。仕事の内容は、お客様からお預かりした資産の運用、または運用商品の企画、年金等の機関投資家向けの営業など。これらに携わった後、外資系信託銀行の代表取締役副社長を務めたのを最後に2008年1月に退職。その年の11月に鎌倉投信を現在の役員4人で創業しました。

「結い2101」という国内株中心の公募型の投資信託を運用、販売しています。「結い2101」に組み入れるのは"いい会社"だけです。株式を短期で売買して高いパフォーマンスのみを追求するのではなく"いい会社"を応援して、社会を豊かにする枠組みをつくりたかった。「金融を通じて日本を元気にしたい」という創業の想いは今も変わりません。

伊藤綾(以下・伊藤)私は大学卒業後40人ぐらいの出版社に勤務し、料理記者をしていましたが1年で寿退社。20代は夫の勤務先の社宅で専業主婦をしていました。2000年に1年更新の契約社員としてリクルートに入社し、ゼクシィ事業部に配属になりました。

首都圏版編集長を務めた後、双子の男の子を出産して再び編集長職に復帰しました。仕事一辺倒だったのが、生活を大事にしたいと思い、「定時に帰る編集長」にトライしました。もちろん完璧にできることはなく、今も日々葛藤しています。鎌田さんは会社員として組織の中ではどんな葛藤があったんですか?

鎌倉投信さまオフィス

鎌倉投信オフィス外観

鎌田 もともと金融業界に入ったのは特別な想いがあったわけではなくて、大学のテニスサークルの先輩に誘われるままに入って...。

伊藤 意識高くない学生ですね(笑)。

鎌田 まったく高くない(笑)。「信託銀行は都銀や証券会社よりも仕事はラクだし、その割に給料はいい」と言われ、誘われるままに入った信託銀行ですが、入社して徐々に違和感を覚えました。自分の仕事が世の中の役に立っているという実感が得られなかったんですね。大手企業で働くことでスキルや経験を身につけることはできましたが、金融が社会の役に立っているという実感が少しずつ薄れていったんです。

金融業界は「自分たちの会社がいかに儲けるのか」といった目標に対してブレない姿勢はありますが、社会の"不"の課題をどう克服するのか、社会にどう貢献するか。会社とはどうあるべきかーーなどの側面はあまり強くありません。私が働いていた会社もそういう考えを前面に出すわけではなかったので、「自分は何のために仕事をしているのか」と常にジレンマを抱えていました。

伊藤 社会を真に豊かにする。それが鎌倉投信の会社の志"3つのわ"につながっているのですね。それぞれどのような意味が込められているんですか?

鎌田 日本の「和」は、普遍的な価値を感じることです。また、人が集うと「輪」が広がります。そこではコミュニケーションがうまれて夢を語り合うような「話」があります。人と地域、あらゆる可能性を秘めたひろがりのある企業を育てていきたいという想いを込めました。鎌倉にある本社は築約100年の古民家で、ここで説明会もやります。投資家の方や投資に興味がある方、さまざまな立場の方が来られます。縁がつながる金融商品をつくれたらいいなと思っています。それが原点ですね。

鎌田 恭幸(かまた・やすゆき)

鎌倉投信株式会社 代表取締役社長 鎌田 恭幸さん

ー お二人の共通点は今までの固定観念を覆して新しい価値観を見出しているところにあると思います。鎌倉投信のファンド「結い2101」もこれまでの投資信託とは違った斬新な商品です。投資先の会社はどんな基準で選んでいるのですか。

鎌田 私たちが今投資しているのは直近で60社。株式市場に上場している会社もあれば非上場の会社もあります。"いい会社をふやしましょう"というのが鎌倉投信の合言葉なのですが、いい会社の定義はとてもシンプルで、本業を通じて社会に貢献している会社です。今の日本はモノとサービスはいき渡っていて、モノやサービスを増やしても価格競争に陥るだけです。仕事を通じてその企業に関係する人たちが喜びや幸せを感じる組織でないと、これからの時代は生き残っていけないと思います。

「結い2101」に組み入れる企業の評価基準は35項目程度ありますが、社員に活気があるかどうか。障がい者や女性、ニートやフリーターなど多様な人財が活躍しているか。また、循環型社会や地域雇用などに取り組んでいるか。そして、オンリーワンの技術やサービスを持っているか、などをみています。そのために、実際に会社に訪問して経営者に会うとともに、社員さんが幸せに働いているのかどうか確かめています。

伊藤 幸せを感じる組織。評価基準を確認されるだけでなく、訪問されてそこまでご覧になるのですね。「幸せ」というと、思うことがあります。ゼクシィには約15年携わったのですが、その間にカップルが求める"幸せ"が少しずつ変わってきたと実感していたんです。

例えば、象徴的なのはケーキカットのシーンですね。バブル時代はとにかく背の高い、大きいケーキが求められていた。それが今は、テーブルサイズのデコレーションになり、参列者が一緒に食べる。ふたりの幸せを遠くから祝うことから、みんなと一緒に幸せになっていく感覚に変わってきた。この15年の間で、結婚は「恋愛のゴール地点」の時代から、結婚後も生き方のレールが一つではない、そんな未来への喜びと不安が膨らんでいったことも背景としてあるのかなと思います。

鎌田 会社も同じですね。自分や自分の部署だけが成功するのは、達成感は得られるのかもしれませんが、幸福感は満たされない。幸福感は何で満たされるのかというと、人と人との関係性なんです。自分ひとりだけではなくみんなで成し遂げた。あるいは誰かに喜んでもらったということでパワーが出る。みんなで考える組織からはいいモノが生まれてきます。モノはすでに世の中にあふれているので、心に響くものが含まれていないと消費行動にはつながりません。

伊藤 綾(いとう・あや)

株式会社リクルートホールディングス ソーシャルエンタープライズ推進室 室長 伊藤 綾

ー "幸せ"の価値観が変わったのはリーマン・ショックの影響ですか。

 

鎌田 人々の価値観は、常に少しずつ変化しているとは思いますが、大きな転機としてはやはり2011年の東日本大震災だったと思います。

伊藤 結婚式のあり方も、2000年代後半、2008年から2009年頃を境に少しずつ変わってきたと感じます。かつては仲人さんが新郎新婦を紹介していたのが、今ではお父さんが「小さいころはこんな子どもでした」などと紹介するように、それまでは披露宴の末席にいた親御さんが登場するようになって、家族の関係性をシェアするようになりました。ステータスを重んじる文化から人との関わり、絆に価値を求めるように変化してきました。

鎌田 経済的にも社会的にもそうですね。今の日本は戦後の焼け野原からスタートして、高度経済成長の時期には、効率性とか合理性を求めるためにピラミッド型の組織が勤勉な日本人には合っていました。ですが、経済が成熟した今ではトップダウンからボトムアップのように組織の末端にいる人たちの創造力、発想力が求められる。縦割りではなく組織同士の関係性が新しい価値を見出していく。

伊藤 鎌倉投信さんのホームページにお客様の声が寄せられていて、その中に「幸せになりました」という声があったのが印象的でした。投信会社に寄せられる声としては意外な感じがしましたが、そこに会社とお客様の関係が絆とか繋がりという言葉では表せない、今までの関係をひとつ越えた「幸せにしあう」関係性が見えてきました。

鎌田 鎌倉投信は直接販売の形をとっていて、銀行とか、証券会社などの金融機関が販売仲介をしていません。お客様と直接取引をするので、基本的には顔の見える関係です。投資先の会社とも関係性はかなり強いと思います。マネーゲームと投資は違います。投資は事業活動の発展や成長が反映することで株価が上がり、その結果として投資家にリターンがもたらされます。投資を通して日本をよくして、社会の役に立っているということをお客様に実感してもらいたいと思っています。

伊藤 投信を購入する方は運用についてどのような期待を寄せていらっしゃいますか。

鎌田 金融商品ですので、考え方に共感できるというだけではなく結果に対する期待もそれなりあると思います。「結い2101」の運用を始めて6年半ぐらいになりますが、年間8パーセント程度のプラスの収益で運用しています。目標は、信託報酬控除後で年4%程度です。運用報告会に来られるお客様に運用成績についてとやかくいう人はあまりいませんね。どちらかというと安定した運用を望まれます。

伊藤 お客様はどのような思いで「結い2101」を購入しているのでしょうか。

鎌田 もちろんお金をふやしたいという動機づけはありますが、「このお金を社会に生かしてほしい」という気持ちのほうが強い。"いい会社"に投資してほしいという方が多いですね。東日本大震災の翌営業日は、日経平均株価は10%程度下がりました。市場参加者は不安から株を売却したわけですが、私どものお客様は購入のために入金してくださる方が圧倒的に多くて、その期間は過去最大の入金件数でした。株価が下がったから投資のチャンスというだけではなく、「こういう大変なときだからこそいい会社を応援したい」というスタンスなのです。

ー Webサイトに掲載されている投資先の会社のラインナップをみると、地場産業でオンリーワンの技術を持っているような会社が多いですね。

鎌田 投資の果実(リターン)は、資産形成、社会形成、心の形成の掛け算だと思っています。もちろん、お金をふやすことは根底にありますが、"いい会社"をふやし、その過程で社会がよくなると、心の満足度も高まります。お客様とともに投資先の企業を訪問してもらい、経営者の話を聞いてもらうと、そこから共感が生まれたり、いい影響を受けたりします。これまで、そういうニーズに応える金融機関はありませんでした。だから私たちが始めました。

伊藤 3つのリターン。そこで関わる人、働く人たち、地域やコミュニティーのみんなが"幸せ"を見出す。投資という世界に、新しい価値を生み出されているのですね。

鎌倉投信さま

後編に続く

人と社会を幸せにする"いい会社"って何だろう鎌倉投信鎌田恭幸×リクルート伊藤綾

  1. 前編
  2. 後編

プロフィール/敬称略

鎌田 恭幸(かまた・やすゆき)

鎌倉投信株式会社 代表取締役社長 

25年以上にわたり、日系・外資系信託銀行の資産運用業務に携わる。株式等の運用、運用商品の企画、年金等の機関投資家営業等を経て、外資系信託銀行の代表取締役副社長に就任。その後、2008年11月 鎌倉投信株式会社を仲間と創業。鎌倉の古民家を拠点とし、社会を真に豊かにするために100年後も活躍できる企業を支援している

伊藤 綾(いとう・あや)

株式会社リクルートホールディングス ソーシャルエンタープライズ推進室 室長

出版社勤務、専業主婦を経て、2000年に株式会社リクルート入社。ゼクシィ事業部に配属。2006年に首都圏版編集長。出産を経て、2010年首都圏版編集長、2011年統括編集長。 "定時に帰る編集長"を目指し双子の育児との両立にトライする。「プロポーズされたら、ゼクシィ」をコアメッセージとしたブランドコミュニケーション、「花嫁1000人委員会」「妄想用婚姻届」「付録『すぎるシリーズ』」などをチーム開発。2015年リクルートホールディングス ダイバーシティ推進部部長、2016年より現職。リクルートグループのダイバーシティ及びCSRセクションを担当。

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