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【後編】課題解決を生む「自然なつながり」studio-L山崎亮×リクルート麻生要一

Recruit , 地域活性 , 新規事業

文:友光だんご 写真:佐坂和也(写真は左から麻生、山崎さん)

studio-Lの山崎亮氏とリクルートの麻生要一に聞いた「正しくつながる」ための方法論とは?

現代日本には、様々な課題が山積している。それらを解決するためのヒントの一つが「人と人のつながり」だ。地域のコミュニティをデザインし、課題解決に挑むstudio-Lの山崎亮氏と、リクルート内で新規事業開発に関わる麻生要一には、人と人をつなぐための共通した手法があった。

それはつながることを目的に人を集めるのではなく、課題そのものに自然と人が集まる仕組みづくりだ。では仕組みが出来上がり、あぶり出された課題に対して二人はどのようにアイデアを展開し、解決へと向かって行くのだろうか。

後編では、それぞれの課題解決における具体的な方法論について話を伺った。

※本対談は2017年5月に行われました。本文中のプロフィールその他の情報は、取材時のものです。

事例を徹底的にリサーチすることで見えてくる課題の本質

ー 山崎さんは「地域が抱える課題」に対して、コミュニティデザインの手法をつかって解決の手助けをされています。前編では、課題意識をもった地域の住人たちがワークショップでつながっていくための仕掛けづくりが大切だとおっしゃっていましたが、どのようにしてワークショップは進んでいくのでしょうか。そのプロセスについて教えてください。

山崎 まずワークショップに集まった人たちに地域が抱える課題をたくさん挙げてもらいます。そして2回目ではその原因を参加者に聞くんです。「なぜ? なぜ?」としつこいくらいに問いかけて、課題の深掘りをしていきます。

そこで出てきた課題の関係を図に起こして、どこから手をつけるかを決めるわけですが、ここで「事例シート」というのが登場します。

ー 事例シートとはどのようなものなんですか?

山崎 「タイトル、概要、事例が出て来た経緯、直面している課題、参考URL」という要素をA4用紙1枚にまとめることのできるフォーマットです。

まず、課題と関係する具体的な事例を世界と日本の視点から調べて、一人10個ずつ事例シートにまとめてくるという宿題をワークショップの参加者に出します。この時点では、調べるのはインターネットでOKです。ここで10人のチームなら100件の事例が集まりますよね。そして次のステップではチームごとにプレゼンしてもらいます。

すると100件のうち10件は「これは面白い」という事例が出てきます。次はその10件について、書籍や新聞でリサーチして3件まで絞り、さらに関係者へアポをとり取材してきてもらいます。それをA4用紙10枚ずつにまとめてもらう。ここでようやく、ワークショップ本番の準備ができあがります。

麻生要一(以下、麻生) ここまでが準備段階なんですね。

山崎 つまり、ある事例に対して浅い考え方が100パターン、ちょっと深い考え方が10パターン、すごく深い考え方が3パターンと、理解度の異なる人たちが同じワークショップのテーブルにつくんですよ。すると、全員が具体的な事例を元に課題解決の方法を考えられるんです。

麻生 確かに、うんと建設的になりますね。下調べもワークショップのなかに組み込んでしまうのはうまいやり方だと思います。その次はどうするんですか?

山崎 話し合いの結果、よさそうなアプローチのアイデアが20〜30出て来たら、解決にかかる人数と時間をグラフに起こしていきます。すると、今すぐできるアイデアはこれ、仲間が集まったらこれ、数年したらこれ、というようにプロジェクトのシナリオを描けるんです。

麻生 なるほど。プロジェクト全体のスケジュールを、参加者とともに決められるというわけですね。

「原体験づくり」をして問題を自分ごと化させる

ー 山崎さんは事例シートやグラフを用いた手法でしたが、麻生さんの場合はいかがですか?

麻生 課題解決のアイデアを探す際に、まず僕たちが気をつけているのは「とにかく現場に行く」ということです。まだ世の中にない画期的なものを生み出そうというときに、会議室の机上で考えていてもありきたりなものしか出てこないんです。

例えば「なにか介護についてやりたい」という話になった段階で、介護業界に関係のありそうな人のところへ行って、話を聞いてくるようにアドバイスします。

山崎 ずいぶんラフな段階で外へ出るんですね。ワークショップを開いてアイデアを出し合って、とはしないんですね。

麻生 会議室で話しているときって、マネタイズしやすそうとか、成功すれば出世しそうとか、つい本質とズレてしまいがちなんです。でも、現場に行って話を聞くと、本当に困っている人から「この悩みを何とかしてください」と相談されます。

山崎 当事者に相談されると、その課題が自分ごとになると。

麻生 はい、当事者としての感覚を持つまでを「小さな原体験」と僕たちは呼んでいます。ビジネスプランなんか考えていても思いつくものじゃないから、とにかく100人に会ってきなさい、100人に話を聞けば自然と思いついているよ、といつも言っています。

山崎 僕たちが初めての地域に入るとき、地域の100人とまず話をして関係を作るようにしているのですが、それと同じですね。

麻生 ネットや新聞の記事で書かれていることって、問題の一番深いところまで届いていないこともあるんですよ。だから直接話を聞きにいって、誰も見えていない真実が見えるところまでひたすら深掘りしなければいけない。

例えば「介護業界では大幅に人手が不足している」という表層の部分ではなく、「〇〇市にある××という介護施設では職員が不足していて、今いる職員が抜けてしまうこのタイミングさえなんとかできれば」という細かいレベルまで掘り下げられるか。

掘り下げながら、見つけた課題に対して適していると思われるサービスを現場の人に提示します。たいがいは「それじゃダメ」と言われるのでどうダメなのかを聞く。その繰り返しを100回くらい行うんです。

山崎 現場の人たちからフィードバックをもらうことを繰り返すことで、質の高いアイデアが生まれるというわけですね。しかし、そちらもずいぶん泥臭いことをやりますね(笑)。

革新的なアイデアは8割の批判者がいることでうまくいく

ー 質の高いアイデアといっても、受け取る人によって賛否わかれると思いますが、どのように判断していくのでしょうか。

麻生 2割くらいの人が絶賛していて、8割くらいの人が「そんなの意味がない」とかネガティブなことを言っているときが一番いいと思います。

山崎 「2対8」ですか...! そんなに少なくてもいいんですね。

麻生 はい、最初は10割が興味ない状態です。そこから少しずつ支持者が現れてくるので、2割の賛成までもっていく。逆に9割の人が絶賛しているときはダメなんです。そんなときは、どんな風にアイデアをプレゼンしたか尋ねます。すると、たいていアイデアの質に関係なく相手に「いい」と言わせるようなプレゼンをしてしまっている。だめだと言われるのはつらいですからね。でも、既存の仕組みを変えるようなイノベーションに対するネガティブな反応はつきものですから、8割がネガティブなことを言っていても大丈夫なんですよ。

山崎 僕が2005年にコミュニティデザインの事務所を立ち上げたときを思い出しますね。当時は「コミュニティデザイン」という言葉も知られていなくて、ものを作らない、人と人をつなぐデザインだなんて言うと反発を受けたんです。金が回らないからやめろだとか、ものをつくるデザインを否定されたと思って怒られることもありました。

プロジェクトを立ち上げるときに、ネガティブな声を聞くと精神的にも参るわけです。だから、立ち上げのまだ不安な時期に「とにかくやれ!」と応援してくれる存在は重要ですね。

麻生 僕はそこのサポーターであるということと、「小さな原体験」を通じて人生をかけてやるんだというモードに変えるのが仕事ですね。その二つがないと、プロジェクトが軌道に乗る前のネガティブの壁を超えるのは難しいと思います。

山崎 本気で能動的に取り組めば、やがて「楽しさ」を感じられる段階がくると思います。そこまで進むことができればもう大丈夫。課題に取り組むこと自体も楽しいし、その過程で人とつながることも楽しいはず。

麻生 チームで活動することの楽しさもありますね。

山崎 つながることを目的とするのではなく、自然と生まれたつながりが結果として楽しさを生む。だから、とにかく能動的にまずはチャレンジしてみてほしいですね。

課題解決を生む「自然なつながり」studio-L山崎亮×リクルート麻生要一

  1. 前編
  2. 後編

プロフィール/敬称略

山崎亮(やまざきりょう)

studio-L代表。東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)。慶応義塾大学特別招聘教授。

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。著書に『ふるさとを元気にする仕事(ちくまプリマー新書)』、『コミュニティデザインの源流(太田出版)』、『縮充する日本(PHP新書)』、『地域ごはん日記(パイインターナショナル)』などがある

麻生要一(あそう・よういち)

株式会社リクルートホールディングス R&D 新規事業開発室 室長(取材時)

2006年、株式会社リクルートへ新卒入社。入社2年目に、社内新規事業提案制度「New RING」で準グランプリを獲得。2010年に株式会社ニジボックスを設立、2013年より代表取締役社長 兼 CEOとして約4年間ITベンチャー企業の経営を行う。2015年2月から約2年半、スタートアップ企業、研究者やイノベーターの活動を無償で支援する「TECH LAB PAAK」の所長も兼任する。取材時は、2015年より着任した「新規事業開発室」の室長として、複数の新規事業の発掘・投資・育成を一手に担当。

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