人財・組織戦略のプロフェッショナル アキレス美知子さんのリクルート考

人財・組織戦略のプロフェッショナル アキレス美知子さんのリクルート考

リクルートグループは社会からどう見えているのか。
私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2017年7・8月号からの転載記事です

人財に対する圧倒的な優位性をもつ最強のグローバル企業を目指して欲しい

私は人事に携わって約30年になりますので、リクルートさんとはこれまでさまざまな接点がありました。企業としては、採用や研修を非常に幅広く手掛け、特に新卒採用の領域においては、膨大なデータベースの構築によってデファクトスタンダードを作ったというイメージを持っています。

ここ数年は、リクルートキャリアさんが主催する『グッドアクション・アワード』の選考委員をさせてもらっています。アワードの立ち上げから協働する過程で、このアワードそのものが、御社のカルチャーをよく表していると感じています。

最初は「現場発の良い取り組みに光を当てて社会へ発信したい。それをヒントにまた新しいイノベーションが起きていく仕組みを作りたい」とお声がけをいただきました。具体的に何をするかはまだ決まっていない段階でしたが、推進者の方の熱い思いや一生懸命な姿には、企業やアカデミア、行政といった壁を取り払い、いいことは実現したいと思わせる何かがあったんです。このアワードは、現場の社員が発想して形になり、成果が出たことに対して光を当てる。それがGreat Actionではなくても、一つひとつのGood Actionの積み重ねが結果的にGreatな動きになる。そんな観点が新鮮で、社会的にも意義のある取り組みだと思いました。戦略人事の第一人者である一橋大学大学院教授の守島基博先生たちと一緒に活発な議論を交えつつ、「こんな考え方もあるのでは?」「こうしてみたらどう?」と問いかけながら、でも最後は「やってみましょう」と、アワードの誕生までお手伝いをさせてもらいました。

きっとリクルートさんでは社内でも同じような光景があるのでしょう。健全な危機感や課題意識を持って自ら動いていく人、それに対して「あなたはどうしたいの?」とWhyを問いかけながら許容していく上司、そして巻き込まれる周囲の人。こうした風土は、今の日本においてはとてもユニークですし、強みだと思います。私は、社内外を問わず、「圧倒的な当事者意識」を持ってチャレンジする人財がもっと育って欲しいという思いが根底にあるので、グッドアクション・アワードに協力しているのかもしれません。

今、売上に占める海外比率は約40%になっているそうですね。製品やオペレーションのグローバル化は実践できている企業が多いですが、人財のグローバル化はまだまだ課題です。ダイバーシティ&インクルージョンがここ数年議論されていますが、女性の活躍文脈で語られることが多いように思います。しかし、本質は異能人財を取り込み活かしていくことです。自分とは違った属性や才能を持っている人を、違うから面白い、もっと話を聞いてみよう、この人にこれを任せたらもっと開花するかもしれない。そんな発想で事業に最適な人財を見つけ出し、育成し、配置する。それをグローバルスケールで行っていく。グローバル展開が待ったなしの今だからこそ、本来持っているリクルートさんの強みを次の段階へ発展させていく絶好の機会です。

リクルートさんへの期待は人財に対する圧倒的な優位性を持つ最強のグローバル企業になることです。そして、人財のグローバル化の専門性を高め、自らが経験してきた変革をクライアント企業に共有して欲しい。それが実現できた時が、真の意味でのグローバルカンパニーと言えるのではないでしょうか。

SAPもいろいろな試行を重ねて、ようやくグローバルでひとつの形になってきましたが、常にトランスフォーメーションを進めています。また、得意とするデザイン思考を使った他社とのコ・イノベーションも展開しています。例えばリクルートさんとSAPが人財のグローバル化で協働すれば何か面白いことができるかもしれませんね。

私は、全ての人がタレントであると考えています。自分が大切にしているものは何か、どんな価値を他の人に提供できるのか、そしてその価値を会社という舞台を通してどう具体化していくか。ちょっとしたアイデアでも、これって価値だよねというのを少しずつ増やしていくことが、大きな自信につながりますし、自信が増えればさらに思い切った挑戦ができるようになる。

一人ひとりがそうした意識を持ちながら、日々の仕事に向き合うことが、会社の未来につながっていくと思っています。

プロフィール/敬称略

アキレス美知子

SAP ジャパン株式会社 常務執行役員 人事本部長
横浜市政策局男女共同参画推進担当参与
NPO 法人GEWEL(Global Enhancement of Women's Executive Leadership) 副代表
上智大学比較文化学部経営学科卒業。米国Fielding大学院組織マネジメント修士課程修了。 富士ゼロックス総合教育研究所で異文化コミュニケーションのコンサルタントをはじめ、シティバンク銀行、モルガンスタンレー証券、メリルリンチ証券、住友スリーエムなどで人事・人材開発の要職を日本およびアジアで歴任。あおぞら銀行常務執行役員人事担当、資生堂執行役員広報・CSR・環境企画・お客さまセンター・風土改革担当を経て、現在に至る。プライベートでは米国人の夫を持ち、二人の娘の母親でもある。

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