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シリーズ アジアで働く インド後編 世界最大の多様性国家インドに、日本人はどう挑む?

Recruit , ものづくり , アジア , グローバル , グローバル人材 , テクノロジー , ビジネススキル , マーケティング , 働き方

企画:榊原 宏一(JP Selection planning Group Marketing MG) 文:葛原 信太郎

GoogleのCEO スンダー・ピチャイ氏、MicrosoftのCEO サティア・ナデラ氏、Adobe systems のCEOシャンタヌ・ナラヤン氏、彼らはすべてインド人だ。言うまでもなく世界中に名を轟かす超一流企業である。インド前編でもお伝えしたように宇宙開発に関して先進国と言える技術と実績を持ち、スマートフォンが1年で1億台売れる。携帯電話は9億台売れていて、都市部の道路は車・eコマースの配達バイク・動物・自転車・人が入り乱れ、常に渋滞していて、その多様性を肌で感じることができる。 

多様性国家インドで、日系企業や、日本人がどうビジネスに挑んでいけるのか。そのヒントを得るべくマイクロアド・インディアを立ち上げ、インド国内でインターネット広告事業を展開してきただけでなく、インド駐在中には様々な媒体でインドのビジネストレンドを伝えてきた佐々木誠氏、そして、インドの人材事業・マーケットに詳しい、RGF Select India(リクルートの海外人材紹介事業)の森土卓磨の2人に話を伺った。

生まれながらに海外経験をできる国

━ ターバン、カレー、タージ・マハル。そんなイメージしか出てこないのであれば、今のインドを全く知らないと言っていいだろう。ここではインドの今を伝えていく。

佐々木 インド人は生まれながらにして、海外経験をしているんです。公用語は20以上、宗教もさまざま。日常的に言葉や常識が通じない場面に出くわします。そんな環境でなんとか生活をしていかなきゃならない。他人に対して無関心なときはとことん無関心だし、主張するときは主張する。これは、グローバル社会で求められることでもあります。

インド出身の優秀な人材は数多くいますが、貧困家庭に生まれた人も少なくない。貧しいながらも頑張って学校に通い、卒業し、アメリカに留学し、アメリカで就職する。貧しさも豊かさも知っているので、対応力がすごい。そして英語ができれば意思疎通できるんだから。

佐々木誠

━ このような国であるから"平均"も意味をなさないし、新聞広告を出すにしても、多言語対応せねばならず、苦労するところだと佐々木氏は話す。

佐々木 最近はジムがすごく流行っていますね。イタリアンも流行っています。窯焼きピッツァはおいしいものが出てきますし、お店の数で言えば日本より多いかもしれません。裕福なインド人奥様たちが集まって、女子会をしています。クラブも流行っていたりと、モノからコトに興味や価値観がシフトしていることを感じます。

━ レストランはほぼデリバリーに対応。インドと言うとカレーのイメージが強いが、実はワインも有名で、インド国産ワインは豊富にあり、南に行けば魚がうまいという。

1年で1億台のスマートフォンが売れる国

佐々木 インドではeコマースが非常に盛り上がっていますが、その背景にはスマートフォンの普及があります。インドでは端末が非常に安い値段で販売されているんです。5,000ルピー(8,000円)くらいですから、学生でも買うことができます。携帯電話は9億台売れていて、そのうちスマートフォンが3.5億台。PCを持っている人はほとんどいません。インドではPCを飛び越えてスマートフォンが普及したのです。

インドでは、eコマースのほとんどがブラウザではなくアプリから購入される。ブラウザは通信環境の悪さや通信料を気にして、あまり使ってくれないそうだ。また、wifi環境でアプリをダウンロードさせれば、他社との比較検討がしづらく、ユーザーを囲い込めるため一石二鳥だ。アプリで買うと価格が安くなるキャンペーンも盛ん。翌日配送は普通で、サービスによっては90分で届けてくれるものもある。

佐々木 eコマースのユーザーは所得に関係なく、18~35歳くらい。インドでは、デジタルデバイドが35歳くらいのところにあるんです。一方、リアル店舗はかなり厳しい。週末のショッピングモールは混み合いますが、それ以上に渋滞がひどい。さらに在庫管理も曖昧。「入荷したら電話する」と言われて、電話がかかってきたことは一度もないです(笑)。それならネットで買うよ、となりますよね。私もほとんどeコマースで購入していました。

━ eコマースの急増に伴い、ロジスティクスの業者も増えている。インドの大雑把なイメージとは裏腹に、商品は正確に届けられるという。

佐々木 インドはオペレーションが得意な国なんです。コールセンターも有名ですし、ちゃんとスタッフを管理しています。eコマースでは配達員には端末を持たせて、商品を渡すとサインをもらう。正直、配達員の意識はそんなに高くないですがルールを厳格に決めて運用し、仕事をすれば給料が払われる。大きなトラブルもなく、非常に便利です。

━ 12億人の人口を有するインド、eコマースだけでなく、消費者マーケットは爆発的に伸びていくだろう。インドに進出しないことが、リスクになると佐々木氏は言う。

佐々木 日本の良さを知ってもらうのは、時間がかかると思います。日本の商品は質が勝負。使ってみて良さを知る類のものです。例えば、例えば、聞いた話だとアメリカ帰りのインド人は日本製品の良さをよく知っていて、インドでも同じ製品を求める、と。インドでも同じものを買いたいのです。

短期的に考えては難しいと思います。10年くらいかけて、じわじわやれば、必ず芽は出る。インド進出に数回失敗しても、さらに挑戦している会社もあります。そのくらいの気合いが必要ですが、頑張れば、いいものは確実に広がります。現状では、安かろう悪かろうのほうが需要があるんですが、価値観の変化が激しいですから、今後はよりクオリティの高いものにお金を使うようになるでしょう。全体を捉えようと思うと、膨大でマーケティングも難しいですが、ニッチなことでもいいんです。富裕層向けの商品だって、ターゲットは1億人いたりするわけですから。

インドで戦うために必要なこと

━ ここからは、インド人とのコミュニケーションについて、佐々木氏に加え森土にも話を聞いていく。 RGF Select India Private Limitedにて、ジャパンデスクの責任者を務める森土は、在インドの日系企業向けに日本人、インド人双方の人材紹介をしている。大阪外国語大学で、インドの公用語のひとつであるウルドゥー語 を専攻し、前職では南アジアの革を扱う商社に入社。RGFでは上海勤務もしており、アジアでの豊富な経験がある。

森土卓磨

森土 インドには「ジュガード」という考え方があります。日本語で言うと、超合理主義、結果を最大限重視するというような意味です。日本ではプロセスを重視して、プロセスを元に改善するし、プロセスの報連相も大事にしますが、そういう文化はインドにはありません。また、契約社会であり、交渉社会なので、日本ではなんとなく進んでいくようなことも、インドでははじめに決めなかったことは起こらず、常にネゴシエーションが必要です。日本人にとっては苦手なことが多いかと思います。

佐々木 商慣習に関しても日本との違いは大きいですね。例えば、代金回収が難しい。日本であれば、金利がとても低いから、払わずに手元に現金を置いておくことにメリットはありません。しかし、インドだと金利が10%くらいあるんです。できるだけ支払いを遅らせたほうがいいので、なかなか払ってくれない。平気で半年くらい滞納されちゃったりします。こちらはキャッシュフローがどんどん厳しくなって大変でした。

━ さらに、スタッフを雇う際にも注意が必要だと森土。

森土 副業をしている人も多いんです。会社以外に、友達のお店を手伝っていたり。一つの会社に対して執着がありません。ここがダメなら次に行けばいいというような。お金だけでなく、いろいろな面で、その人のことを考えてあげないとすぐに辞めてしまうことになりかねません。トラブルにならないように、入社に当たっての契約書はきちんと書いておくことが大切です。

━ また、佐々木氏はインド人の言葉に惑わされてはいけないという。

佐々木 インド人って、論理力があるイメージがあると思うのですが、そういう人ばかりではないです。適当な人もいます。「いくらぐらい?」「うーん、10億!」みたいな(笑)。道を聞いても、知らない場所なのに「あっち!」って言っちゃいます。直感的に反応するというか、刹那主義ですよね。

━ インドで働く以上、インド人とのチームワークは必須である。佐々木氏は、単身インドに挑み、現地のインド人を採用し、日本人1人でインド人スタッフを複数人抱えて業務を行ってきた。

佐々木 多少ゆるいところもありますが、ボスに対しては非常に礼儀正しいんですよ。自分に利害がある人のことは、とても素直に言うことを聞いてくれる。私はコミュニケーションを取る時間を大切にしました。インド国内での出張も多かったので、そのときにはプライベートのことを話したりして。基本的には、義理堅いし、礼節も大事にする人たちです。

自己主張も激しいし、日本人とは性質として真逆と言っていいと思いますが、だからこそ、良いコンビネーションが生まれるはずです。日本人は計画を立ててきちんとやる。そこにインド人の強気なところや、多様性を活かす、と。

インドの都市風景

━ では、日本人がインドで成功するには何が必要だろうか。

佐々木 「新しい環境に溶け込む力」が大事でしょうね。ローカルに溶け込んでやれる人は仕事もうまくやっています。いい家に住んで、会社と家の行き来しかない人はもったいない。結局のところ、インドの良さを知ろうとしないと、うまくいかないんです。駐在が長い方もみなさん、そうおっしゃっています。インドの衛生問題や大気汚染に対して引いてしまうのではなく、インドならではの面白さを見つけていく。新しい環境が好きな人、チャレンジングな人にとってはすごく良い国ですね。

森土 こんな国だからこそ、日本人が求められている職種、業界は幅広くあります。営業、総務、工程管理、エンジニア、金型の技術者などはニーズがあります。ぜひチャレンジしに来てほしいですね。

━ 去年よりも今年、今年よりも来年、常に成長し、変化している国インド。困難な環境だからこそ、自分の限界を超えていくことができる。多様な文化と人に揉まれ、揉まれ、揉まれた先には、世界中で注目されているインドで戦うことができた新しい自分に出会うことができる。1日でも先延ばしにすれば、1日分置いていかれるような激動の国。挑戦するなら、今だ。

プロフィール/敬称略

佐々木誠(ささき まこと)

商社で2年働いた後、2000年にサイバーエージェント入社。ネット広告の営業経験が長いが、Ameba(アメーバ)の立ち上げなど新規事業にも携わってきた。2012年にグループ会社のマイクロアドに移り、インド責任者。ネット広告やECパッケージを元に日系企業やインド企業を開拓した。2016年に日本へ帰任。今は国内の営業責任者。

森土 卓磨(もりど たくま)

Japan Business Head, RGF Select India Pvt. Ltd.

1987年生まれ。大学でウルドゥー語(インド公用語の一つ)を専攻。卒業後、専門商社にて営業・仕入・人事などに従事。南アジアとのビジネスに携わる。その後、リクルート海外法人RGF HR AGENTに転職、上海拠点にて新規開拓業務に従事。2015年5月 RGFインド拠点へ異動。企業、および転職希望者のコンサルティングに従事。2016年1月より同社ジャパンデスクの責任者を務める。

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